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姦譎の華
第15章 15
 しぶきを浴びた指がキュッと縮み、続けざまに噴き出す精漿がストッキングの膜を越えて指間へと流れ込んでくる。ボヤける睫毛の隙から足元を見やると、土の字にしゃがんだみすぼらしい男の中心で、首根を両側からつかまれる小さな亀裂と目が合った。

「そんなっ……、だ、だめですっ……、た、た、多英さまっ……」

 あまりの陋愚さに脚がわななくと、呼応するかのように、槌頭が大きく膨らんだ。距離があるとわかっていても、小孔から噴き出そう穢らしい白濁を全身に浴びてしまう妄覚からは逃れられなかった。それほど、両足につかまされている牡幹はいっぱいに張りつめており、その砲口にまっすぐに狙われて、柱にめり込まんばかりに背を押し付けた。

「あっ……、あ、だ、だめだっ!」
 だが稲田は、突然エビのように後ろへと下がり、指の間から肉槌を抜き取った。「あっ……、あっ、……、う、うう……ぐうぅ……!」

 後ろ手をついて歯を食いしばり、屹立した肉槌を激しく振るっている。
 結局白弾は一発も発射されなかった。

「はっ……、あぁ……。……す、すみません……、し、仕事中、ですから」

 しのぎ切った稲田もまた、島尾と同じような言葉を残して倉庫から去っていく。

(……う)

 再び、闇となった。

 目を瞑ろうが、瞼を上げようが、等しく変わらない闇だ。景色を失うと、肉体の各所で漂い続けている疚しい焦燥が一段と浮き彫りとなる。

(こんなことのために──)

 美しくなったのではない。
 あいつを、見返してやるためだったのに。









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