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姦譎の華
第26章 26
 だが、愛紗実の場合はそうではない。虐欲を満たすのに、生理的な代償は一切払っていない。

 もし、終焉するとしたら──

「で、華村さん。反省しました?」

 そう、彼女が謂うところの「反省」をしなければ、永遠に抉り回されるのだ。言うまでもなく、求められているのは反省という言葉を借りた、屈服以外の何ものでもなかった。

「……はい。……は、……はい……」

 そこまでわかっていながら、数えられる程度の打突と、数え切れないほどの微動に圧倒された多英は、蹂躙の主を一途に見上げて希った。

 いったい何が、どこからどこまでが、悔い改めるべき罪咎なのか、ただでさえ性悦に痺れる頭では判然としなかった。ただ明らかなのは、いにしえの妖具が刷り込んだ熱痒は、常日頃から敵意を向けられてきた、ディルドと繋がる同僚秘書でしか癒し得ないという事実だけだった。

「返事は一回だけって、昔習わなかったです?」
「は、はい……」
「だーかーらー。どうして欲しいの?」

 額がぶつかりそうなほどの距離で訊問される。カラーコンタクトで瞳孔の際立つ眼に見据えられると、

「あの……、し、してください……」
「いつもハッキリ、キッパリしてる華村さんらしくない。ちゃんと言って?」
「……う、うご……かして、くだ……」
「こう?」

 視界いっぱいに愛紗実が広がっていたから、骨盤の底から響いた衝撃に、恥じらいの欠片もない叫喚が喉を抜けた。計算づくでやっているのだとしたらお手上げだ。打突は媚肉に凄まじい快癒を与え、不様な喘ぎを叫ぶだけ叫ばせておきながら、襞面に渦巻く疼きを倍化させただけで、決して絶頂には至らせてはくれなかった。

「ああ……、おねがい……、おねがいよ、藤枝さん……」

 辛うじて発せられた自分の声は、完全に泣きじゃくっていた。

「動かしてって言われたから動かしただけだけど」
「ち、ちが、……ちゃ、ちゃんと、して。……して、ほしい、の、ふじえ……」
「てかさぁ、いつまで上司面よ。いい加減、身のほど弁えてもらえないかな」
 鋭いネイルが頬をなぞって首筋へと降り、喉笛をクッと挟む。「あ、さ、み、さま。そうでしょ?」

 徐々に指の力が強くなり、爪が突き刺さってくると、思うより先に顎が何度となく動いていた。
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