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姦譎の華
第26章 26
 愛紗実の揮ったディルドが牝洞を一閃すると、狂痒を癒す快美が脳天まで突き抜けた。

「……あれ、イッた? え、即イキ? もぉ、こんなんでイッてたら、先が思いやられますよぉ」

 身を乗り出して覗き込む愛紗実は、目尻を跳ね上げたアイライナーに強調される険たっぷりの笑みを浮かべていた。細かく滑らかに腰を揺り動かし、法悦に爛れた襞を掻き撫でてくる。

「ああっ……、や、まだ……」
「うんうん、イッた直後って超敏感。ゆるゆるーってされるとたまんないですよねー」
 一発の爆炎だけでは済まさず、至るところに淫焔を延焼させると、「いつも変態たちホジってあげてるから、私、そこらの男よりもずっと上手いですよ。……えいっ!」

 軽薄な掛け声とともに新たな爆撃を喰らい、胎の中を火だるまにされた。隙間のないほど詰め込まれたディルドの根元の小さな角が肉蕊を弾くと、脳に繋がる神経が次々と断線していく妄覚に襲われ、蜜まみれの肉壁が、恋人どころか人ですらない牡幹を搾りあげてしまう。

「あらら、また軽くイキそうになってますね。そんなに愉しんじゃダメですよぉ。今まで頑張ってきたオッサンたちが可哀想でしょ?」

 たった二回のストロークで牝域を制圧した愛紗実は、一転してスローピッチへと切り替えた。ただし決して多英を凪ぎ落ち着かせることのないテンポを刻む。

 愛紗実が自賛したとおりに、上手い、というよりは、底知れない恐怖だった。

 身に押し込められた牡の象りは、島尾のものよりも太く、稲田のものよりも長かった。とはいえいかに質量があろうが、血の通っていない、寒々しく無機質な代物のはずだ。

 なのに愛紗実の下腹に装着された瞬間に、ディルドは残忍な兇器と化していた。中年男たちの雑駁とした抽送とは一線を画し、憎らしいほど狡獪に、羞恥を忘れて狂うことはできない絶妙の力加減で要所々々を狙ってくる。

 こんな妙技が繰り出せるのは、とりもなおさず傀儡の使い手が、女の悦びを身体感覚として把握している同性であるからに他ならなかった。

 たしかに、飢えた中年たちの下欲は底なしだった。しかし真に無尽蔵だったかというと、牡の営為には現実的な限界があって、いつか瀉液は枯渇し、淫辱は終わってくれていた。
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