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姦譎の華
第5章 5
 しばらくのちに聞こえてきた女の呟きには、いくばく諦めの響きがあった。

 どうやら間違いなさそうだ。どうやら本当に、先ほどから気がかりで仕方のない、ジャケットを窮屈に見せるけしからんふくらみに、社内を通り過ぎるたびに盗み見ては、家で枕を使って再現させてきた本物に、手が届くところまで来ている。

「──それで?」

 するといきなり、美貌の秘書は姿勢を変えた。
 脚を組み、片側の肘掛へと傾く。艶光る唇を不敵に結び、また、額に落ちてきていた髪を脇へと払っている。

 居直るつもりなのかもしれなかった。

 島尾は立ち上がった。
 もう、迂遠なことはしていられない。時間をかけたくない。腹の下で一気に血潮を充填させたムスコも同感だと言っている。時間がもったいない。

「こ、これが公になったら、華村主任……、は、華村、あ、あんたも、酒井さんみたいになるぞっ。いや、世間で評判のあんたなら、もっとおおごとになるっ」

 敬語をやめて胸を張っても、見上げる視線は突き刺さるように鋭く、軽く蹴散らしてきそうだった。

 まったく生意気な女だ。

 今すぐに座り方を改めさせ、そうだソファも使わせてはならない、地べたへと跪かせ、どうかお許しくださいと額づかせてやる。そして、どれだけ詫びようがお構いなしに、さっきから人を挑発してならない、ボインと呼ぶにふさわしい胸をわしづかみにしてやる。

「ですから、私にどうしろとおっしゃるんですか?」
「だからっ……!」
 息を吸い込んだらぶるぶると肺が震えたから、吐き出す時にどんな声になるやら知れなかった。「いっ、一発ヤラせろ……い、いや、一発じゃねえっ、その、エッ、エロッちいカラダ、をっ、きっ、気が済むまで、何発でもっ、ヤ……、ヤラせろってことだっ!!」

 カラダを要求された女というものは、まずは絶句するか、悲鳴をあげるかするのだと思っていた。

「……稲田さん、あなたもですか?」

 しかし女は、さして変わらぬ声調で、なぜか一緒になって立ち上がっていた稲田にも声をかけた。

「え……、えっと……」
 逃げるのか? いや、逃げちまえばいい。「はい、私も、はっ、華村しゅ、主任と、その……、ぜひセ、セックスを、しようと、……いえ、したいと、思っています……」

 残念ながら稲田は島尾よりも明確な言葉を使って、意志を示したのだった。
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