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旧家のしきたり
第2章 嫁試し
どのくらいたっただろうか。沈黙を破ったのは、美穂だった。

「お母様……」

美穂は座り直し、背筋を正した。

「お母様が私を気遣っておっしゃっていただいていることは、よくわかりました。でも、私は優斗さんを愛しています。優斗さんが一緒であれば、どんな辛いことも我慢できます。一生懸命、蔵森家のために尽くします。ですから、お母様、優斗さんとの結婚を許してください」

そう言うと、美穂は、三つ指をついて頭を下げた。

美穂の身体は小刻みに震えていた。美穂としては、最大限の勇気を振り絞っているということだろう。

美穂、ありがとう。

僕は心の中で感謝すると、美穂に倣って姿勢を直した。

「母さん、僕からも改めてお願いします。僕が美穂を支えます。一生懸命、蔵森家のために働きます。ですから、僕たちの結婚を許してください」

僕たちは必死に何度も頭を下げてお願いした。何度も何度も……。

やがて母が折れた。やれやれという感じで、大きなため息をつくと、

「わかりました。本当に、どんなことでも我慢できますか? 意に沿わないこと、理不尽と思われることでも受け入れることができますか?」

「はい、がんばります」

目を輝かせて美穂が答えた。

「優斗、あなたはどうですか?」

「美穂と一緒なら、どんな試練であろうと耐えてみせます」

「それほど言うのなら、蔵森家の妻になれるかどうか、一度試してみましょう」

母は佳子さんを呼び、御三家を集めるように指示した。
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