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第2章 嫁試し

「なぜですか！」

思いもよらない言葉に、僕は腰を浮かして母に理由を尋ねた。

「優斗の妻になるということは、蔵森家の妻になるということです。蔵森家のことを第一に考え、自分のことを犠牲にしてでも蔵森家のために尽くす女になるということです。

それがどれくらい大変で辛いものか、あなたたちにはわかっていますか。お互いが好き合っているということだけでは務まらないのです。

蔵森のような田舎には都会にはない、この地域、この家ならではの決め事が沢山あります。中には都会の人から見れば非常識と思われるようなもの、とても辛いものもあります。そういったものをすべて受け入れなければなりません。

土地で生まれ育ったものならまだしも、よその土地、ましてや都会育ちのお嬢さんにできるものではありません。ですから私はこの結婚に反対するのです」

「母さん、美穂なら大丈夫です。美穂は優しく賢い女性です。母さんが教えてくれれば、どんな決め事でも覚えてくれるし、守ってくれます。蔵森の家にもこの土地にも必ず溶け込んでくれます」

母は大きくかぶりを振った。

「優斗、私が言いたいのは、そういうことではありません。私も蔵森家の当主です。これまで沢山の人に会ってきました。美穂さんが、申し分なく素晴らしい女性であるというのは一目でわかりました」