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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第10章 痛みの問題
「後継者交替の期限は、もうすぐだろう?それまでに結婚相手を決められなければ、この家には後継者が不在になるんだったよね?」
自分の言葉を聞いて元婚約者がふらついたのを気にも留めずに、リアンはローゼルとビスカス以外の出席者達の方に向き直りました。
「……ロゼの我が儘を許しても、良いのですか?」
「貴方は、ローゼルが我が儘を言っていると、思うのね?」
大奥様はリアンを見据えて、問いました。
「はい。ロゼも、そう言って居ますよね?」
「……品の良い話では無いから、はっきり言うのは控えたのだけど」
疲れた様に溜め息を吐いた大奥様は、ぴんと張った糸の様な空気の中で、通りの良い朗々たる声で語り始めました。
「後継者の仕事の一つは、次の世代を繋ぐ事ーー子を儲ける事よ。
勿論、愛し合っても子が出来ない夫婦は居るわ。それはどうにも出来ない事だけれど、最初から共寝の相性が良くないとはっきりしている同士が夫婦になるのでは、困るのですよ。
この地の婚礼は、宣誓で心が結ばれているかどうかを確かめ、異議申し立てで周囲に祝福されているかどうかを確かめて……そして、二人で踊る事で、肉体的に結ばれる事が出来る相手かどうかを、最後の最後に確かめるのですよ」
大奥様は唇を噛んで俯いているリアンを見やった後、ローゼルとビスカスの方に目を向けました。