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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第10章 痛みの問題
「ビスカス」
「へ……はいっ!」
「ローゼルを、部屋に連れて行ってやって頂戴」
「へ」
「ローゼル」
「はい、お祖母様」
「リアンには、私達から話をするわ。その間、席を外していて頂戴」
「……はい……」
承った頼みに頭が追い付いていないらしいビスカスと頬を染めて目を伏せたローゼルを見た大奥様は、孫娘に優しく微笑みました。
「安心なさい。もう、無理はさせませんよ。……ビスカス?」
「はいっ!?」
ビスカスにとって、大奥様は半ば雲の上に居る様なお方です。その大奥様に二度も名を呼ばれたビスカスは、かちんと固まりました。
「ローゼルを、宜しくお願いしますよ。……頼むわね」
「……畏まりましたっ!」
「あ」
ビスカスは大奥様の頼み事を忠実に実行するために、ローゼルを両手で横抱きに抱き上げました。部屋に連れて行けと言われたからといって、抱き上げなくてはいけない訳では有りません。抱き上げられたローゼルは一瞬びっくりしましたが、ビスカスが今までに無いほど緊張している様子を見て、くすりと笑ってぎゅっとビスカスに抱き付きました。
「お嬢様。今から、お部屋にお連れ致しやす。しっかり掴まってて下せぇよ」
「ええ、ビスカス」
ローゼルはビスカスの揺るぎない体に身を預けて、薔薇の蕾が綻ぶ如く、柔らかく匂い立つ様に微笑みました。
こうして、彼女の護衛が彼女の元から離れた事でもたらされたローゼルの憂鬱な毎日は、この時に、永遠に終わりを告げたのでした。
その後、この二人が、どうなったのかはーー
また別のお話として、ビスカスが語ってくれる筈で御座います……。
【おしまい→「ビスカスくんの下ネタ日記」第15章117ページに続いております(_ _)】