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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第1章 三日月夜にワルツを
放課後、伊織は図書室に籠り、翌日の授業の予習をしていた。
…伊織にとって、図書室は厩舎の次に落ち着くところだった。

士官学校は文武両道をモットーとしている。
武道や軍事教練の成績だけでは、上位成績者にはあがれない。
語学は英語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、中国語…と、様々な言語を学習する。
他にも授業は数学、物理、化学、人体生理学、地理学、海洋学、航空力学と多岐に渡っている。
それに加えて毎日の過酷な軍事教練だ。
大抵のものはあっという間に悲鳴を上げる。
入学した三分の一は直ぐに学校を辞め、卒業出来るのは半分にも満たないほど、熾烈な学校生活であった。

この過酷な学生生活に弱音を吐かずに付いてこられるのは伊織と和葉くらいだ。
伊織は見るからに逞しく頑強な肉体と、大人びた風格さえ感じる端正な外見なので、皆はあまり驚かない。
だが、和葉は如何にも名門貴族の子弟然とした美貌と優雅な佇まいなので、大層驚かれる。

この…夜会で上質な黒燕尾服にホワイトタイを身につけ、美しい令嬢とワルツを踊ったりするのが何より嵌りそうな華麗な外見と裏腹に、和葉は誰よりも強靭な肉体と精神を兼ね備えていた。

軍事演習の際には白い肌を泥だらけにしながら、誰よりも勇敢に戦う。
和葉は演習が過酷であればあるほど、生き生きとする。
その見た目の美貌を裏切る雄々しい雄姿に、和葉の信奉者は益々増えるのだった。


…昨日の演習でも、俺より先に陣地を奪取出来たと瞳を輝かせていたっけ…。
思い出すと可笑しくなり、伊織はくすりと笑った。

「何?思い出し笑い?」
ふいに背後から伊織の肩に温かな手が置かれ…甘い花の薫りが漂った。
振り返る先には、にっこり笑う和葉がいた。

…こいつは本当に神出鬼没だな…。
何故だか分からないが、伊織がいるところを瞬時に嗅ぎ分け、ふらりと現れる。
そして人懐っこく伊織に絡んでくる。

…あんなに人気者なのに…。
俺なんか構ったって面白くないだろうに…。

…けれど、和葉と話すのは…本当は嬉しい…。

「篠宮のことを考えていたんだ」
和葉は一瞬、美しい瞳を輝かせたが、眉を顰めて見せた。
「まだ篠宮〜?…ま、いいや。
…で?僕の何を考えてたの?」
ぐいぐいと身体を押し付けられ、また心臓が騒ぎ出す。

…鎮まれ、俺の心臓…!








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