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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第1章 三日月夜にワルツを
士官学校は二年に上がると、それまでの大部屋から二人部屋に変わる。
一年次は、五十畳ほどの広さの大部屋に二十人分のベッドが並び、仕切りのカーテンもなくプライバシーも皆無であった。
それぞれのお付きの上級生の世話も焼かなくてはならないし、朝からばたばた走り回っている内にあっと言う間に一日が終わる。
消灯後、へとへとになりながらベッドに倒れこみ、泥のような眠りに落ち、朝を迎えるのが定石であった。
二年次に上がり、六月になると正式に部屋替えが発表される。
進級の喜びと共に、ほぼ個室のような部屋を与えられるので、皆はその日を待ち焦がれているのだ。
部屋割りは寄宿棟の一階の廊下に張り出されていた。
部屋割りなどさして興味のない伊織は、人気も疎らになった頃、確認に行った。
伊織が現れると掲示板の前にまだ少し残っていた同級生達が、少し驚いたような表情をして道を開けた。
不思議に思いながらも、淡々と掲示板を見上げる。
部屋番号を確認しながら自分の名前を探す。
…あった。
…ふと、自分の名前の隣に書かれた同室者名が目に飛び込んで来た刹那、思わず声が漏れた。
…篠宮和葉…て…嘘だろう…⁈
一年次は、五十畳ほどの広さの大部屋に二十人分のベッドが並び、仕切りのカーテンもなくプライバシーも皆無であった。
それぞれのお付きの上級生の世話も焼かなくてはならないし、朝からばたばた走り回っている内にあっと言う間に一日が終わる。
消灯後、へとへとになりながらベッドに倒れこみ、泥のような眠りに落ち、朝を迎えるのが定石であった。
二年次に上がり、六月になると正式に部屋替えが発表される。
進級の喜びと共に、ほぼ個室のような部屋を与えられるので、皆はその日を待ち焦がれているのだ。
部屋割りは寄宿棟の一階の廊下に張り出されていた。
部屋割りなどさして興味のない伊織は、人気も疎らになった頃、確認に行った。
伊織が現れると掲示板の前にまだ少し残っていた同級生達が、少し驚いたような表情をして道を開けた。
不思議に思いながらも、淡々と掲示板を見上げる。
部屋番号を確認しながら自分の名前を探す。
…あった。
…ふと、自分の名前の隣に書かれた同室者名が目に飛び込んで来た刹那、思わず声が漏れた。
…篠宮和葉…て…嘘だろう…⁈