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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第1章 三日月夜にワルツを
…いよいよ、離れ離れになる。
今まで演習にすぎなかった「戦争」が現実のものとなる。
それが、伊織の和葉に対する愛をより加速させ、激しい執着へと導いているのだ。
そのことを、和葉は密かに喜びに感じていた。
…この美しく雄々しくも孤独で孤高の青年が自分だけに執着し、愛を捧げてくれている…。
もし、自分が亡くなっても恐らく彼は自分に愛を捧げ続けるだろう…。
そう考えると、身の内から震えるような甘美な快美感が駆け巡るのだ。
「何を考えている?」
黙り込んだ和葉を案じるかのように、貌を覗き込まれる。
伊織は最近、和葉のことは寸分漏らさずに把握したがるようになった。
自分の手のひらから溢れ落ちる和葉に纏わることを恐れるかのように…。
…そして、そんな伊織を和葉は殊更に愛おしく感じている。
「何でもない。…伊織。さあ、踊ろう」
伊織の手を繋いだまま、ホールの隅に歩いて行く。
カーテン裏に隠していた蓄音機に密かに持ち込んでいたレコードを載せる。
「…ドイツの唄だから、万が一見つかっても咎められない。
でも、この歌手は最近反戦の唄を歌い出しているからね…発禁になるのも時間の問題だな」
今まで演習にすぎなかった「戦争」が現実のものとなる。
それが、伊織の和葉に対する愛をより加速させ、激しい執着へと導いているのだ。
そのことを、和葉は密かに喜びに感じていた。
…この美しく雄々しくも孤独で孤高の青年が自分だけに執着し、愛を捧げてくれている…。
もし、自分が亡くなっても恐らく彼は自分に愛を捧げ続けるだろう…。
そう考えると、身の内から震えるような甘美な快美感が駆け巡るのだ。
「何を考えている?」
黙り込んだ和葉を案じるかのように、貌を覗き込まれる。
伊織は最近、和葉のことは寸分漏らさずに把握したがるようになった。
自分の手のひらから溢れ落ちる和葉に纏わることを恐れるかのように…。
…そして、そんな伊織を和葉は殊更に愛おしく感じている。
「何でもない。…伊織。さあ、踊ろう」
伊織の手を繋いだまま、ホールの隅に歩いて行く。
カーテン裏に隠していた蓄音機に密かに持ち込んでいたレコードを載せる。
「…ドイツの唄だから、万が一見つかっても咎められない。
でも、この歌手は最近反戦の唄を歌い出しているからね…発禁になるのも時間の問題だな」