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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第1章 三日月夜にワルツを
伊織が黙って和葉を強く抱き寄せた。
ステップが止まり、和葉は伊織の胸に倒れこむ。
「伊織…?」
伊織の大きな手が和葉の貌を引き寄せ、上向けにする。
「…卒業したら、暫くは会えない。
貌をよく見せてくれ。俺がお前の貌を忘れないように」
「よく見ないと忘れるの?薄情者」
口を尖らせる和葉の頬にそっと触れる。
「黙ってろ…」
言葉は高飛車だが、手つきは泣きたくなるほどに優しい。
「…お前の貌が大好きだ。…何度見ても見飽きない。
…どんな美しい絵や彫像よりも、お前は美しい…」
美辞麗句がくすぐったい。
「…意外に口が上手いよね、伊織」
構わずに、優しい手が和葉の貌を撫で続ける。
「…お前の目が好きだ。琥珀色の綺麗な瞳…。
見つめるだけで、吸い込まれてしまいそうだ…。
…それから、この綺麗な唇…」
指先が唇に触れ…堪らなくなったように、貌を近づける。
伊織の唇が優しく重ねられる。
長く甘く優しい口づけが与えられ、和葉は吐息を漏らす。
「…全部、好きだ…」
初めて照れたように伊織の眼が細められた。
お返しのように、和葉が伊織の貌に手を伸ばす。
「…僕も伊織の貌が大好きだ。
特にこの目…。猛禽類みたいに鋭くて…でも、僕を見る時だけ優しいよね」
二人は小さく笑い合い、額を合わせた。
ゆっくりと離れ、見つめる。
「…和葉、ワルツを教えてくれ」
「ワルツ?」
意外な言葉に聞き返した。
真っ直ぐな黒い瞳が和葉を見つめ返していた。
「俺はこの戦争が終わったら、お前と一緒に暮らしたい。
男同士だから結婚はできないけれど、死ぬまでお前と一緒にいたい。
…それから、お前の誕生日に毎年ワルツを踊りたい。
十年、二十年…そうやって二人で年を重ねて行きたい。
…和葉、俺は、お前以外の人間とはワルツを踊らない。
だから、俺にワルツを教えてくれ」
和葉の美しい琥珀色の瞳が潤む。
胸が詰まり、言葉にならない。
ステップが止まり、和葉は伊織の胸に倒れこむ。
「伊織…?」
伊織の大きな手が和葉の貌を引き寄せ、上向けにする。
「…卒業したら、暫くは会えない。
貌をよく見せてくれ。俺がお前の貌を忘れないように」
「よく見ないと忘れるの?薄情者」
口を尖らせる和葉の頬にそっと触れる。
「黙ってろ…」
言葉は高飛車だが、手つきは泣きたくなるほどに優しい。
「…お前の貌が大好きだ。…何度見ても見飽きない。
…どんな美しい絵や彫像よりも、お前は美しい…」
美辞麗句がくすぐったい。
「…意外に口が上手いよね、伊織」
構わずに、優しい手が和葉の貌を撫で続ける。
「…お前の目が好きだ。琥珀色の綺麗な瞳…。
見つめるだけで、吸い込まれてしまいそうだ…。
…それから、この綺麗な唇…」
指先が唇に触れ…堪らなくなったように、貌を近づける。
伊織の唇が優しく重ねられる。
長く甘く優しい口づけが与えられ、和葉は吐息を漏らす。
「…全部、好きだ…」
初めて照れたように伊織の眼が細められた。
お返しのように、和葉が伊織の貌に手を伸ばす。
「…僕も伊織の貌が大好きだ。
特にこの目…。猛禽類みたいに鋭くて…でも、僕を見る時だけ優しいよね」
二人は小さく笑い合い、額を合わせた。
ゆっくりと離れ、見つめる。
「…和葉、ワルツを教えてくれ」
「ワルツ?」
意外な言葉に聞き返した。
真っ直ぐな黒い瞳が和葉を見つめ返していた。
「俺はこの戦争が終わったら、お前と一緒に暮らしたい。
男同士だから結婚はできないけれど、死ぬまでお前と一緒にいたい。
…それから、お前の誕生日に毎年ワルツを踊りたい。
十年、二十年…そうやって二人で年を重ねて行きたい。
…和葉、俺は、お前以外の人間とはワルツを踊らない。
だから、俺にワルツを教えてくれ」
和葉の美しい琥珀色の瞳が潤む。
胸が詰まり、言葉にならない。