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契り【~初身世】
第2章 月琴楼
「フゥ…」
常夜は二度目の溜め息を吐く。
『一週間後…私はあのお店で神様の相手をする……』
正直、『恐い』と『不安』でいっぱいだった…
相手はどんな方なんだろうか。
男の人と話した事があるのは弥勒だけ…他の男の人は知らない。
女将…李夫人の言っていた少女を汚すとはどういう意味だろう。
…少なくとも、あまり良いイメージはない。
これからの未知の事に、常夜の胸は鉛のように重くて苦しかった。
「ガァッ…ガァッ!!」
「ッ!!?」
突然、橋の下から鳴き声が聞こえた。
何かと思い下を観ると一羽の黒い烏(カラス)が河原で大きな翼を苦しそうに羽ばたかせていた。
常夜は急いで河原に向かうと、烏の足元を見た。
足には何か細い糸が絡まっていた。
…釣糸のようだ。
「足に絡まって飛べないのね!…ちょっと待ってて!」
常夜は弥勒から護身用にと、渡された小刀を胸元から出し糸を切る。
よく見ると烏の足は三本だった。
「グァッ!グァッ!!」
「やっ…!ちょっとっ、暴れないでっ!?糸を切るだけですからっ!」
足を切られるのかと思ったのか烏は暴れ出したが常夜は慎重に小刀で糸を切る。
ーブッ…
『!』
「…切れたっ!」
糸が切れて烏が小さく飛び、常夜から少し離れたところで立ち止まる。
常夜は小刀を鞘にしまい、手を小さく振り笑顔で烏を見送る。
烏は常夜を見た後、大きな翼を羽ばたかせ空を飛んだ。