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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
「まあまあ、こんなべっぴんさんのお嬢さんを煤だらけにしてしもて…。綺麗なおべべも台無しや。
千紘さんは案外いけずやなあ。
さあさあ、お湯使ってきよし。疲れたやろ?
ミツ、お嬢さんを湯殿に案内してあげよし」

きびきびした岩倉の母に背中を押されるように、笙子は若い女中に導かれ、湯殿へと連れて行かれた。

…京都の商家の家の造りは特殊だ。
鰻の寝床のように長い長い廊下がいつまでも続いている。
洋館で育った笙子には見るもの全てが珍しい。

「お嬢さん、東京からいらしたんでしょう?
…千紘坊っちゃまのお嫁様になられるんでしょう?
やっぱり、千紘様のお嫁様になるようなお方は違うわあ!
お人形さんみたいに綺麗やわあ…!」
ミツと呼ばれる女中は好奇心旺盛で陽気な性格らしく、湯殿に案内する間中、目を輝かせながら笙子に話しかけてきた。

人懐っこいその様子に笙子はほっとし、恥ずかしそうに頷いた。
「…ええ…。岩倉先生に無理やりお願いしたんです。
私と今すぐ結婚して下さい…て」
…笙子の両親に婚約を申し込むと言う岩倉に、笙子は首を振ったのだ。
「そんなに待てませんわ。
…私を今すぐ岩倉先生のお嫁様にして下さい」

…今思い出しても、どうしてあんなに積極的な言葉が出てきたのか…。
自分でも分からない。
けれど、どうしても岩倉のそばを離れたくなかったのだ。
ずっと一緒にいたかったのだ。

ミツは歓声を上げた。
「わあ!やっぱり東京のお嬢さんは進歩的やなあ!
おなごの方から求婚するなんて…!
ええなあ…!お嬢さん、かっこええわあ!」
ミツの感激した声を受け、笙子は白い首筋を桜色に染めたのだった。
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