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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
笙子の部屋から何やら賑やかな笑い声が聞こえる。
朝食の支度が出来たと知らせに行く女中のミツと共に部屋を訪れた岩倉は、中に入り思わず眼を見張った。

笙子は道子に帯を締めて貰い、綸子縮緬の華やかな薔薇が描かれた振袖を身に纏っていたのだ。
髪もいかにも新妻らしく若々しく結い上げられ、ほっそりとした白く長い頸が露わになっているのが艶かしい。
岩倉を振り返り、恥ずかしそうに頭を下げた。
「…お寝坊してすみません」
「ちっとも構いませんよ。…それよりこれは…」
近づいてくる岩倉に、道子が陽気に話しかける。
「思った通りやわ。笙子さんはお着物がよう似合うわ。
お貌立ちが整いすぎるくらいに綺麗やから、洋装のほうが似合うんかと思うてたけど…お振袖のよう似合うこと!優雅で上品で…可愛らしいなあ…。
ほんまのおひい様みたいや、なあ、千紘さん」
「ええ、本当に…。とても綺麗です。
…こんなに綺麗な女性を僕は見たことがない…」
手放しに賞賛する岩倉に、笙子がくすぐったそうに肩を竦め…嬉しげに微笑った。
「お義姉様がお貸し下さったんです。お大切なお振袖なのに…」
「ええねん、ええねん。茜が着る頃には流行遅れやしなあ。
…ほら、出来上がりや。綺麗やねえ!ようお似合いや!」
道子が結び終えたふくら雀の帯の形を満足そうに見つめ、ぽんと帯を叩いた。

「義姉さん、ありがとうございます」
礼を言う義弟に悪戯っぽく目配せした。
「うち、綺麗ないとさんは大好きやねん。それに…笙子さんは何かこう…ついつい世話を焼いてあげたくなるような可憐ないとさんやねえ。
…千紘さんも可愛くて可愛くて仕方ないんやろ?」
…あんじょう、可愛がって差し上げてなあ…と、囁きながらにこにこと部屋を出た道子を見送り、改めて笙子を見つめる。




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