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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
志津が届けた朝餉に箸も付けない笙子を見て、岩倉は褥に横たわる笙子の傍に静かに座った。

「食欲がありませんか?
…では、果物だけでも召し上がりませんか?今、林檎を甘く煮てきてもらいましょう」
優しい言葉に、笙子は俯いたまま力なく首を振った。
白い寝巻きの肩が痛々しいほどに薄く、か細い。

透き通るような白い頬に透明な涙が伝う。
「…ごめんなさい。…千紘さん…。私…私は…貴女の妻、失格です…」
「笙子さん?何を仰るのですか…貴女がなぜ謝るのですか?」
貌を強張らせる岩倉に、笙子は貌を背けたまま泣きじゃくる。
「…千紘さんのお嫁様にしていただいたのに…私は何一つ妻の務めを果たせていません。
…そればかりか、貴方にご迷惑ばかりかけています…。
私なんて…私なんていない方が良いのですわ…」
岩倉の力強い腕が笙子の腕を捉え、そのまま抱き起こした。
「馬鹿なことを仰らないで下さい!
貴女は何一つ悪くはない。
全ての責任は、私にあります。
貴女のお心の傷を分かっていながら、貴女が欲しい余りに、性急に需めすぎてしまいました。
私を許して下さい」
岩倉の言葉を聞き、笙子は益々涙を零す。
「いいえ…いいえ…!私も…千紘さんと結ばれたいのです。貴方のものになりたいのに…それなのに…!」
…過去の忌まわしき亡霊が蘇る…。
恐ろしい悪魔と岩倉とが重なって見えてしまう…。
あの悪夢から…どうやったら逃れることができるのか…。
分からない…分からない…!

小刻みに震える笙子の身体を強く抱きしめる。
「笙子さん。貴女は何一つ悪くない。ご自分を責めないでください。
大丈夫です。私が付いています。ご一緒に…乗り越えてゆきましょう。
私は貴女を愛しています。誰よりも深く…。
…だから、私を信じてください」
…背中を摩る手が温かい。
岩倉の良く通る美しい声が、傷ついた笙子の心に静かに染み渡る。

男の愛の深さに笙子は静かに嗚咽を漏らしながらも、そっとその頼もしい背中に震える白い手を伸ばしたのだった。




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