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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
「全く…あいつは…」
ため息を吐く岩倉に、笙子はくすくす笑う。
「環さんは、お気持ちの真っ直ぐな方ですわ。
ご心配なさらないで。
…それより…」
口づけの続きを求めるように、笙子は甘く岩倉を見上げる。
「…笙子さん…愛して…」
小さな美しい貌を引き寄せたその時…。

「あらあ、堪忍なあ。皆んな座敷で花嫁さんと花婿さんの登場を待ちわびてるよってなあ」
どこか惚けた陽気な声と共に襖が開かれ、留袖姿の篤子が現れた。

「…お母様…」
岩倉はがくりと肩を落とす。
「そんな目ぇして見んとき。どうせ今夜からずっとイチャイチャできるんやないの。
…今、環ちゃんとすれ違ったけど?」
笙子はにっこりと笑う。
「私たちの結婚を、祝福してくださいましたわ」

篤子も目を細める。
「それは良かったなあ。
…環ちゃん、来月から京都の美術学校に編入することに決めたらしいねん。東京の学校はきっぱり退学してなあ。
卒業までこちらでお世話になりますて、伽倻子さんと一緒に神妙に頭下げはったわ。
伽倻子さんもあれこれ楽しそうに環ちゃんの世話焼いてはってなあ。
環ちゃんはむすっとしてんねんけど…あれはほんまは嬉しいんやねえ」
…あの子も変わったなあ…。

しみじみと呟く篤子に、二人は貌を見合わせ微笑む。

どうやら伽倻子と環は和解し、最近では伽倻子は頻繁に嵐山を訪れているのだ。
親子の心のようやくの雪解けの時期に、岩倉はほっとしていた。

伽倻子も最近、少し変わった。
嵐山の家で環の好きな料理を作ったり、二人で散策に出かけたりとそれはごく普通の親子の風景だが、実に穏やかな幸せそうな表情をするようになった。

…伽倻子さんも、ありきたりな母親だったんだな…。
それが岩倉にとっては、何より嬉しい。

感慨深く思いを馳せている岩倉に、篤子の声が飛ぶ。
「さあさあ、結婚式や。早よ座敷に行きよし。
皆んなあんた達二人を祝いたくてうずうずしているよってなあ。お父様なんて朝からそわそわ落ち着きのないこと。笙子さんの花嫁様姿、見とうて堪らんねん。
さあ、行きよし!」

岩倉が優しく声をかける。
「…では、行きましょうか。笙子さん」
「はい。千紘さん」
篤子に背中を押され、二人は手を取り合い部屋を出た。



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