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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
「…取り込み中、悪いけどさ…」
のそりと現れたのは、環だった。
岩倉は慌てて笙子を離し、環に眉を寄せる。
「環…」
ため息を吐く岩倉に、環はにやりと笑う。
「今更いいじゃない。あんたが色ぼけしているのは百も承知だよ」

環はそのまま笙子に向き直る。
「笙子ちゃん。…悔しいけれどすごく綺麗だよ。
今日はおめでとう。
…千紘のものになっても、笙子ちゃんはやっぱり俺のミューズだ。
笙子ちゃんが嫌じゃなかったら、これからも俺の絵のモデルになってくれる?」
真摯な眼差しと言葉が笙子の胸を打つ。
環はまだまだ純粋な少年なのだ。
傷つきやすい無垢な綺麗な感性を持った少年…。
笙子の母性本能が柔らかく刺激される。

「…ええ。私でよろしければ…」
環の瞳がきらきらと輝き、満面の笑みを浮かべる。
「ありがとう!笙子ちゃん!大好きだ!」
素早く笙子の手を握りしめ、その清らかな白い額にキスをした。
「おい!環!」
声を荒げる岩倉に、環は冷ややかに流し目を送る。
「ケチケチすんなよ。どうせ一生、笙子ちゃんは千紘のものなんだから」
笙子の手を離し、岩倉に向き直る。
「…笙子ちゃんを絶対に幸せにしろよな。
しなかったら俺が笙子ちゃんにプロポーズする」
「環…」
涼しげな貌でウィンクをし
「油断すんなよ。ちいちゃん」
懐かしい昔の呼び方で温かく笑うと、そのまま風のように部屋を出て行ったのだった。


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