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雨月喫茶のヒミツ
第1章 春の月* 泡沫に溺れる
少女は早く触って欲しくて仕方がないのに、一向に触れようとしない。

「蜜が滴ってる。翡翠のこと考えて、こんなになっちゃってるんだ」

「ちが……」

「翡翠の長い指先を入れてほしいのか、それともーー翡翠の熱が、欲しいのかな」

「んん……」

言葉だけでまたじわりと蜜が溢れて、零れてくる。

欲しくて欲しくてしょうがない。

翡翠が欲しい。

なのにーー

「でも、お嬢さんを見ているのも、触れるのも僕だよーーもっと魅せてよ……余裕のない姿を」

悔しい。

悔しい。

悔しい。

余裕がなくなっていく。

少女は潤んだ瞳で少年を見つめーー


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