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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第7章 大きさの問題
「こちらこそ昨日は大変失礼しました、若旦那様」
「いやぁ…………は?」
昨日の件の決まり悪さで照れていたビスカスの耳を、聞き慣れない音が抜けていきました。
「……今、なんて?」
聞き返すと、侍女はにやっと笑いました。
「『若旦那様』? 昨日は、失礼致しました」
「っっぅぅううううううぇぇえええええっ!?!?」
叫びを上げて固まったビスカスの肩を、侍女はぽん、と叩きました。
「申し訳無い事につい忘れちまうんだけど、あんた、ローゼル様と夫婦になったんだものねえ。いくら長年呼び慣れてるからって、いつまでも『ビスカス』でも無いでしょうよ。……それに」
侍女は固まったままのビスカスの手から、さり気なく片付け物を引き取りました。
「……あのローゼルお嬢様が、あんな風になるなんてねえ……あんた、なかなかだったのね。見直したわ」
「う!」
(あんな風……って、どんな風だよ!?)
それに、自分について言われた「なかなか」と言うのは、どういう意味なのでしょう。
何も答えられずに顔に頭に血が上って来るのだけを感じていると、侍女は苦笑してビスカスに発破をかけました。
「ま、お嬢様をしっかりお支えして、頑張んなさいよ。あたしらみんな、こちらになるべく長くお世話になりたいって思ってるからね。代替わりしたら傾いたなんて事になっちゃあ困るわよ、『若旦那様』」
「…………へえっ……頑張りやすっ……」
ビスカスは羞恥のあまりへどもどしながら、去って行く侍女を見送りました。
(…………あー……クッソ恥ずかしいやねー……)
糞恥ずかしくは有りますが、ローゼルに仕える者として長年一緒に働いて来た侍女に、ローゼルの夫として認められて激励された嬉しさが、照れの底からじわじわと湧いて参りました。
「……っしゃっ!!」
ビスカスは締まりの無い真っ赤な顔を両手でぱんっと一つ叩いて気合いを入れ直すと、妻のお目覚めのご機嫌伺いの為に、足早に部屋に戻って行きました。