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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第8章 我慢の問題
「いらっしゃいませ、ローゼル様、ビスカス様」
「こんにちは、クロウ。スグリ様はいらっしゃる?」
ローゼルは、家令のクロウが開けた扉から柊屋敷の玄関に入りました。挨拶しながら外套を肩から滑り落とすと、後ろで控えていたビスカスがそれを受け取って、自分の外套と一緒に抱えました。
「ええ。お二人がいらっしゃるのをお待ちかねですよ」
クロウはビスカスから二人分の外套と帽子を受け取って内扉を開き、二人を中に促しました。
「ローゼル様!!」
「スグリ様!!」
中に入った途端に、明るく弾んだ声が聞こえて来ました。来訪に気が付いたスグリ姫が、サクナを伴って部屋から迎えに出て来て居たのです。
「お帰りなさい!お戻りになるのを、心待ちにして居ましたのよ!」
「私も!またお目にかかれて、本当に嬉しいですわ!」
ローゼルとスグリは満面の笑みで手を取り合って、抱き合わんばかりに再会を喜びました。そんな女二人の様子は、殺風景な冬の屋敷に春をもたらすかの様に、明るく温かく華やかでした。
(ああ……ウチの嫁は、この世で一番クッソ可愛いわ……)
男二人ははしゃぐ妻達を見て全く同じ事を考えて、でれでれと顔を緩ませました。
「あ!」
ローゼルと喜び合っていたスグリは、一歩下がった所ににこにこして控えていた男に気付きました。
「ビスカスさん!!お久し振りね!!」
「お久しゅう御座いやす、スグリ様」
「お元気そうで、良かった……そうだわ!お二人はご結婚なさったのよね?」
「へえ……」
「ええ!!」
照れるビスカスと大輪の薔薇の様に晴れやかに微笑むローゼルを見て、スグリは感激で目を潤ませました。
「ご結婚、お目出度う御座います。とってもとっても、嬉しいわ……!」
「ありがとう、スグリ様」
「有り難うごぜぇやす」
「……お前ら……」
玄関先で盛り上がっている三人に、苦笑混じりの声が掛かりました。
「久々に会えて嬉しいなぁ分かるが、いつまでこんな所で立ち話してんだ?」
「サクナ」
「スグリ、冷えるぞ。ローゼル、ビスカス。茶の用意をさせたから、お前達もとっとと部屋に入れ」
「そうね!ようこそお越し下さいました、ローゼル様、ビスカスさん。どうぞ、こちらへいらして下さいな」
当主夫妻の温かな招きに顔を見合わせて微笑むと、ローゼルとビスカスは、奥へと歩き始めました。