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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
「スグリ」
「あら!!」
ビスカスとローゼルの訪問の翌日の午後。
侍女達と一緒に部屋の花の世話をしていたスグリの耳に、思わぬ声が聞こえました。
「どうなさったの?忘れ物?」
それは、仕事場に行っている筈のサクナでした。昼餐を一緒にしたあと出掛けて行ったので、夕方までは帰って来ない予定だったのです。
嬉しげに夫に駆け寄る主に微笑みながら、侍女達はお辞儀をしてそっと部屋から下がって行きました。
「いや……お前に頼みてぇ事が有って、抜けて来た」
退出する侍女達に頷いて妻を抱き締めたサクナは、栗色の髪に愛おしげに口づけて、そのまま話し始めました。
「頼み?なあに?」
「この後何も予定が無ぇなら、ローゼルと茶でも飲んでやってくれねぇか」
「ロゼ?」
聞かされた思わぬ頼みに、スグリは顔を上げて夫を見ました。
「予定は大丈夫だし、お話出来るのは嬉しいけど……良いの?今日は、お仕事しにいらしてるんじゃないの?」
「それが……様子がおかしいんだよ」
「おかしい?」
スグリは、ローゼルが昨日渡した酒を早速使ってみたのかと思いました。
(ロゼの様子が、おかしくなってるってっ!!……ビスカスさん、どんな事をっ……)
「おかしいって……ふらふらしてるとか?」
「あ?」
「それとも、すっごく歩きにくそうとか?」
「は?」
「時々溜め息吐いて、ぼーっとしてるとか……?」
「……お前、何か心当たりでも有んのか?」
妻の想像したローゼルの「おかしい」の偏りっぷりのおかしさに、サクナは疑いの目を向けました。
しかしスグリは言い終わるか終わらないかの内に、またサクナの胸に顔を伏せてぐりぐり頭を擦り付けていたので、表情を読むことは出来ませんでした。
「ううんっ、何もっ!!心当たりなんか、なーんにも無いことよっ?!……そうだわ!ビスカスさんはっ?!ビスカスさんも、おかしい感じ?」
「……それが、」
スグリがまた夫を見上げると、その顔は予想外に曇っておりました。いつもの様に、ビスカスをからかう様子も有りません。
「ビスカスは、来てねぇんだ。」
「……え?」
サクナの意外な返事に、スグリは思わず固まりました。