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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
(ビスカスさん、もしかしてお飲みになっちゃって、二日酔いで寝込まれたのかしら……)
ビスカスが来ていないと聞いたスグリがまず考えたのは、その事でした。あの酒は元が保存性の高い果実酒として作られているので、かなり強い酒なのです。飲み残した普通の酒を飲んで二日酔いになる位弱いのならば、あの酒を飲んだら寝込んでもおかしくは有りません。
「来ねぇ事自体は、別に変じゃあ無ぇんだが」
スグリが考え込んでいると、サクナが話し始めました。
「あいつぁ元々、うちの仕事の為に来てる訳じゃ無ぇからな。ローゼルの護衛が仕事で、うちを手伝ってくれてんなぁ成り行きだ。怪我から見合いにかけての間ぁずっと休んでた位だし、あいつが来ねぇでも他の奴が付いて来たんだし、別に良いっちゃ良いんだが……」
サクナは少し考え込む体になり、スグリの髪を手でくるくると弄びました。
「ただ、ローゼルの奴が、その事について一言も喋らねえ」
「……一言も?」
「ああ。『ご機嫌よう、サクナ様。昨日は有り難う御座いました』とかなんとか言って入ってきて、そのまま仕事を始めやがった。ビスカスが居ねぇ事に付いて、一っ言も無しでだぞ?俺が気付いてどうしたのか聞いたら『休みです』だけ言って、そんだけだ。目も合わさねぇし、笑いもしねえ。良く見りゃあ目元は赤ぇし、顔色も悪い」
「まあっ……」
(お酒のせいで、何か……困った事に、なったのかしら)
不安になったスグリは、思わずきゅっとサクナの服を握り締めました。サクナは心配顔になった妻に薄く笑うと、両頬に順番に口づけました。
「大丈夫だ、ローゼルは仕事にゃ来てんだからな。そんなに心配する様な事じゃあ無ぇのかもしれねぇんだが……俺よりお前のが、話しやすいだろうからなあ。悪ぃが、話を聞いてやってくれねぇか?鎌ぁ掛けても『別に?何でも有りませんわ』とか言いやがって、黙々と仕事してやがんだ。始末に負えねえ」
「……分かったわ。ロゼと、話してみます」
「そうしてくれると助かる。ありがとな」
(お酒のせいだとしたら、私にも責任が有るんだもの……お二人が困っているんだったら、力になってあげなくちゃ)
夫に軽く頭を撫でられながら、スグリは密かにそう決意して、小さく拳を握ったのでした。