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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

   *

「お仕事中、ごめんなさいね?」
「いいえ。これも仕事のうちですもの」

 ローゼルは午後の仕事を半分ほど終えた後、「スグリと一緒に新しい茶ぁ飲んで感想を聞いて来てくれ」と、屋敷に使いに出されていました。

「これ、新しいお茶なのですって?」
「ええ。お姉様が都にお戻りになってる間に製品になった、新しい配合ですわ」

 ローゼルがカップにお茶を注ぐと、湯気と共に香りが立ち昇りました。
 その暖かい香りに包まれたローゼルは一瞬目を潤ませましたが、明るい声でスグリの前にカップを置きました。

「どうぞ、召し上がって」
「ありがとう、頂きます」

 一口飲んだスグリは、ふわっと柔らかく笑いました。

「美味しいわ!今までと少し感じが違うわね……なんだか、陽向の河原でのんびりお昼寝してるみたいなお茶ね?ほっとする香りだわ」

 ローゼルはその感想を聞いて、うっすらと微笑みました。

「……これ、元はビスカスが作った物ですの」
「え?ビスカスさんが?」
「ええ。ビスカスが作った干し果物の香辛料の配合を元にして、サクナ様が製品になさったのよ」

「まあ……もしかしてその干し果物って、ロゼに贈られた物なのじゃなくて?」
「……ええ。そうとも言えるかしら」
「やっぱり!サクナったらっ!」
「え?」
「だって、それは、愛する人に作った贈り物でしょう?それを真似て売るなんて、駄目だと思うわ!!」

 膨れるスグリを見て、ローゼルは困った様に眉を寄せました。

「……怒って下さって、ありがとう。でも、そういうのじゃ無いの。私への贈り物として作った物では無くて……そういうのとは、ちょっと違ったの」

 ローゼルは椅子に座って俯くと、自分の前にあるカップをそっと遠くへ押しやりました。

「ごめんなさい……私、今これ頂けないわ……」
「……ビスカスさんと、何か有ったの?」
「……出て行っちゃった……」
「えっ?」
「ビスカス、家を出て行ってしまったの」

 二人を隔てるテーブルの上に、ぽたぽた滴が落ちました。
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