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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
「出て行ったって……家出っ?!」
スグリは思わず立ち上がって、ローゼルの傍らに駆け寄って手を握りました。
「ロゼ、お仕事なんかしてる場合じゃ無いわ!探さないと!」
「……いいえ。家出では無いの。ちゃんと、行ってらっしゃいって見送ったわ」
「へ?」
「行き先も、分かってるの。修行先に結婚の報告したいって」
「……それ……」
それは出て行ったと言うより出掛けたと言うのでは、と思いましたが、珍しくうっかりが発揮されずに、口に出す前に止まりました。
「びっくりしたわ!行き先も言って出て行ったなら、安心しても良いのではなくて?」
「そうなのだけど……帰って来るのかしら……」
「えっ?どうして?」
「泣いてたの」
「え……ビスカスさんがっ?!」
「ええ」
「笑いすぎでも、感動してでも無くて?!」
ローゼルは、こくんと頷きました。
「出て行く時は、笑ってたけど、朝起きた時……私を傷付けた自分が、許せないって」
「ビスカスさん、そんなに酷い事を?!……でも」
スグリは失礼にならない程度に、ローゼルの全身をざっと見ました。
「ロゼ、今日お仕事にいらしたのよね?」
「ええ」
切り傷も、打撲も、内出血も、見える範囲には有りません。先程までを思い出しても、どこか辛そうにしては居りませんでした。
「失礼な事を聞いて、ごめんなさいね?嫌なら答えなくて良いのだけど……傷付けたって、どんな風に?」
ローゼルは無言で髪を掻き上げ襟を緩めて、うなじと肩の境目辺りをスグリに見せました。
そこには、よくよく見たら分かるかもしれない程度の、淡い噛み痕がいくつか付いておりました。
「……これ?」
ローゼルは、こっくり頷きました。
スグリはその痕が付いた状況を想像してしまい、むずっとして赤くなりましたが、傷として見れば大したことは有りません。血も滲んで居なければ、酷い内出血も無い様です。噛んだと言っても、これはかなりの甘噛みです。
昨日聞いた結婚に至るまでの話の中で、ローゼルは肌が弱いと言っておりました。それを考えると、これはローゼルだからこそ付いた噛み痕で、明日か明後日には消えるでしょう。
(えっと……これって、傷ってほどの傷なのかしら?)
かなり長いこと消えない上に、疼く痛みが続いた歯形を付けられた事の有るスグリは、思わずそう口にしそうになりました。