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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
(……ううん。ロゼとビスカスさんにとっては、きっと大変な事なんだわ。ちゃんと、聞いてあげないと)
スグリは、しゃんと背筋を伸ばしました。
「あと、これとか」
「え」
伸びた背筋が、ローゼルの行動でまたへったりと脱力しました。
ローゼルがくつろげた胸元には、花片の様に点々と赤い痕が散っておりました。それを見たスグリは、またもやそれが付いた時を想像し、むずむずっとして内出血より赤くなりました、が。
「これだけ?……あっ」
今度は、うっかりを止められませんでした。
「ごめんなさい。ロゼとビスカスさんにとっては『これだけ』じゃなくて『傷』なのよね」
「ううん」
謝るスグリに、ローゼルはぼんやりとかぶりを振りました。
「私も、そう思ったの。これだけで、そんなに落ち込むなんて……私、別に痛くも無かったし、それに、ちょっと……嬉しかった、くらい、なのに……」
「ロゼ」
「ビスカス、私にされるの、嫌だって……止めてって、言ったの。なのに、私が意地になって、無理矢理……そのあと、お酒が回ったのか、すごく苦しそうで……でも、少ししたら、急にいつもと全然違う風になって……私も、何だか、分からなくなって……だけど、私、大丈夫だって、言ったのにっ……」
スグリはしゃくり上げ始めたローゼルに手巾を渡し、背中をゆっくり撫でました。
「……求婚の時、無理強いして、後悔したのに……また、同じ事……もっと、酷い事……」
スグリは、嘆いて泣いて目を赤くして鼻を啜ってしゃくり上げてさえもなお美しいローゼルを見て、胸が締め付けられました。
「どうしよう……ビスカス、帰って来るかしら……」
「ビスカスさん、いつ頃帰るか言ってたの?」
「一週間位って」
「じゃあ、待ちましょ」
「待ってて、帰って来なかったら?」
泣いている内に子どもの様に不安になったらしいローゼルに、スグリはゆっくり話し掛けました。
「ビスカスさん、ロゼとの約束を、破る様な方かしら?」
「ううん……」
「でしょう?だから、大丈夫。待ってる間に、傷も治るわ」
「……治らなくて良いの……治ったら、消えちゃう……」
「ロゼ」
「許してくれなくてもいいの……帰って来てほしいの……」
「大丈夫よ、ロゼ。一緒に、待ちましょうね」
スグリはローゼルの肩を抱くと子どもをあやす様に、背中をとんとん撫でました。