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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

   *

「……ビスカスっ!」

 ビスカスが諸々の寝支度を終えて寝室に入ると、ローゼルが嬉しげに迎えてくれました。

「お待たせしやしたか?」
「少しだけね」

 ビスカスはとりあえず、ローゼルの座っていた長椅子に並んで腰掛ける事にしました。立ち上がって抱き付いて来たローゼルを座らせて薔薇色の柔らかな頬に口づけると、ローゼルも頬に口づけ返してくれました。

「随分ゆっくりだったのね?」
「リュリュが言ったんじゃねーですか。たまにゃあゆっくり風呂入って、ちゃんと洗えって」

 ビスカスは着るものに興味が無いのと同様、入浴にもあまり興味が有りません。夏は庭の手入れの際に頭から水を被って良しとしたりしていますし、風呂に入る時も烏の行水です。決して不潔では有りませんが、凄く清潔という訳でも有りません。及第点ぎりぎりに引っ掛かる程度の身嗜みで、年中過ごしておりました。

「ん……今日は、石鹸の匂いがするわ」
「あああ!んなとこ嗅いだら、湿っちまいやすって……髪ぁまだ濡れてんですから」
「平気よ。ろくに洗わないいつものビスカスの匂いも大好きだけど、石鹸の匂いのビスカスも好き」
「洗ってねーのが大好きって酷かねーですか」

 湿るのも構わずちゅっと首筋に口づけたローゼルをタオルで拭いてやりながら、ビスカスは苦笑しました。

「良いの。前に言ったわよね?ビスカスの匂いが好きって」
「そりゃ、仰いやしたけど……」

 ビスカスは何とも言えないくすぐったい様な、むずむずする様な気持ちになりました。それを紛らわす様に、肩の上に頭を乗せてくすくす笑うローゼルの髪に軽く口づけました。

「リュリュはいっつもすんげー良い匂いがしやすねー」
「そう?」
「へい……ほら、すっげー良い匂い」
「……んっ」

 ふんふん嗅ぎながら耳元に口づけると、ローゼルが首をすくめました。

「……すげー可愛い」
「ふふ……」

首筋に口づけると、そのまま芸術的な曲線を描いている鎖骨の窪みに唇を付けて、溜め息混じりに囁きました。

「……すげー好きです、リュリュ……」
「……ん……私も、大好き……ねえ、ビスカス?」
「何ですかい?」
「あのね。今日、私にさせて欲しいの」
「……へ?」

 このまままったりいちゃいちゃしながら共寝の体勢に雪崩れ込む予定だったビスカスは、突然のお願いが、頭に入りませんでした。
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