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第2章 仕方のない問題

　どんな夜であろうと、朝は来ます。
　文字通りの吸った揉んだが有ったローゼルの寝室にも、朝がやって参りました。

「おはよう、ビスカス……」
「おはよーごぜーやす、お嬢様」
「起きてたの？起こしてくれて良かったのに」
「やー……お眠りになってるお嬢様を見るなんざ、貴重ですからねー」

　ローゼルとの初夜を愛でたく終えたビスカスは、えへへーと緩んだ笑いを浮かべました。
　そのビスカスに、ローゼルは蕩ける様な笑みを浮かべながら、しなやかな体を擦り寄せました。

「貴重じゃないわよ？これから何度も見られるんだもの」
「ぐっ……」
「どうしたの？」
「頭ぁおかしくなりそーでさ……幸せ過ぎて夢なんじゃねぇか、とっ！？」

　夢と現の間を漂っている気分であったビスカスは、不意にもたらされた股間への刺激に、びくりと体を強ばらせました。

「お嬢様！！何なすってんですかっ」
「……大きいわね……」
「ぐぁっ！止めっ……ちげーやす！朝から邪な気持ちでおっ立ててる訳じゃねーんです！」
「……そう。おっ立てる、とも言うのね」
「生理現象って奴なんで、仕方ねーんです！あ、う、触んねぇで」
「ビスカス？」
「へぇっ！」
「これ、勿体ないわ。」
「はぁあ？！」
「新しい靴を履く時も、朝だと入り易くなるわよね？試してみましょ」
「お嬢様そりゃちげくて朝は足の方が小……あー！」

　夜が明けても、二人は仲良しの様で御座います。


　　　　　＊　　　　　＊　　　　　＊


「お嬢様？お着替えお済みですか？」
「ええ」

　ローゼルは昨日のドレスでは無い、オレンジの地の所々に花模様の刺繍が飾られている、普段着より少しだけ上等な服に身を包みました。
　今朝は侍女の手を借りる時間まで待っている訳にはいかないので、自分で髪を梳かし、下ろしたまま流して整えています。

「御髪は、そのままで良いんですか？」
「ええ。上手く結えないもの」
「……簡単で良けりゃ、お結いしやしょうか」
「え？」
「お忘れですか？お小せぇ頃ぁ俺が御髪をさせて頂いてやしたでしょ」

　ビスカスはローゼルの髪を編み込んでくるくる纏め、最後だけローゼルに飾り櫛を手渡して、自分が押さえている毛先の辺りを止める様に頼みました。

「……上手ね、ビスカス」
「止めんのと梳るなぁ、下手クソですけどねー」

　ビスカスはローゼルの額に口づけました。