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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第2章 仕方のない問題
「ありがとう。これなら、お父様達に……っ」
「お嬢様?どうなすったんで?」
鏡からビスカスの方に向き直ったローゼルは、固まって口籠もりました。
「……っ……こいい……」
「へ?こいい?」
「格好良いのよっ……お前の正装……」
「へ」
ビスカスは、自分を見ました。
ビスカスはここに着替えが無いので、昨日着ていた服をまた着ておりました。正装ではありますが、肩にはローゼルの化粧やら涙やら鼻水やらが付いておりますし、きちんと掛けていなかったため、全体的に皺になっています。その上、襟をきちんと閉めるのが苦手なので、襟元はいい加減に緩んでいます。
それなのに「格好良い」などと言われて、ビスカスは恐縮しました。
「いやぁ、そんな……珍しいってだけで、お誉めに与る程の物じゃあ」
「珍しいだけじゃ無いわよ!ちゃんと格好良いんだって、言ってるじゃないの!!」
ローゼルは立ち上がって、赤い顔でビスカスを睨み付けました。
「私の言う事が、信じられないの?」
「や、お嬢様、こりゃあ信じるとか信じねーとかの問題じゃ」
突然、部屋の扉が、はっきりと叩かれました。
じゃれ合っていた二人は、一瞬凍り付きました。
「っ……」
「どなた様ですか?」
固まって声も出せないローゼルを庇う様に扉との間に立ったビスカスは、扉を叩いた主に向かって言いました。
「おはよう、ビスカス。私だよ。開けられる様なら、開けてくれ」
「……お兄様っ?!」
小さく声を上げたローゼルを気遣わしげにちらりと見ると、ビスカスはタンム卿に言いました。
「少々、お待ちを。…………お嬢様?開けても宜しいですか?」
ローゼルがこくりと頷くのを見たビスカスは、ローゼルの頬を一撫でして安心させるかの様に微笑むと、扉を開けに行きました。
「お待たせ致しました。どうぞお入り下さい」
「有り難う。……おはよう、ロゼ」
「お早う御座います、お兄様」
「二人共、今朝のご機嫌は如何かな?」
タンム卿は、開け放たれた中扉の向こうに見えている寝室の初床の寝台に、ちらりと目をやりました。
そこは、片付けられてはいましたが、睡眠だけに使ったのでは無いという事が一目で分かる程、乱れた跡が有りました。