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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
*
「ロゼ」
「まあ、スグリお姉様!」
「お仕事中、ごめんなさいね?今日お時間が出来る様なら、お茶でもご一緒出来ないかと思って……ご迷惑じゃなかったら、いかが?」
「ありがとう、嬉しいわ!今はどう?ちょうど一段落付いた所で、休憩したいと思っていたの」
ローゼルは微笑んで立ち上がり、スグリと一緒に仕事部屋を後にしました。
ビスカスが不在になってから、半月ばかり経ちました。
修行先に結婚報告に行くと言って出た時は、一週間程度の予定だったのです。しかし、そこで頼まれ事をしたのをきっかけに、帰りが伸びておりました。
それに関してはビスカス本人からちゃんと報告の手紙が来ておりましたが、書かれていたのは帰りが伸びると言う事だけで、いつ帰るかは、はっきり書かれて居ませんでした。
ローゼルは、仕事に来たり時折スグリとお喋りしたり、父親である領主様から家の事について教わったりと、表面上は普段と変わらぬ毎日を送っておりました。
「その後、まだ連絡は無いの?」
「ええ」
お茶を飲む合間の問い掛けに零れた短い返事に、スグリは溜め息を吐きました。
まだローゼルは仕事中です。そのため二人は屋敷ではなく、仕事場の応接室で短いお茶の時間を過ごしておりました。
「本当に、ごめんなさい。私がうっかり変な事勧めたから」
「いいえ。お姉様のせいでは無いわ」
ローゼルは、淡く微かに苦笑しました。
「どうぞ、お気になさらないで。こんなに帰って来ないだなんて、きっとあの時の事だけが原因じゃ無いと思うの。……だから、これは私のせい」
ローゼルはお茶を一口飲んで、きゅっと唇を噛みました。
「ロゼ。あんまり思い詰めないで?サクナに聞いたけど、ビスカスさんってあちこちふらふらする癖がお有りなんでしょ?」
「ええ。でも、こんなに長く私の傍から離れるなんて……」
ビスカスの癖の事を持ち出されたローゼルは、思わず瞳を潤ませました。
こんなに長く離れた事は、ビスカスが修行に行った間と、先日刺されて柊屋敷で静養していた間だけです。怪我をして寝込んだ事は他にも有りましたが、館の自室で休んでいたので、いつでも会うことは出来たのです。
(ビスカス……今、どこに居るの……?)
ビスカスの不在に胸が締め付けられる様な淋しさを感じながら、ローゼルはあの日の事を思い返しました。