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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第2章 仕方のない問題
「……ロゼ?」
「はい、お兄様」
「昨日、お前が退席した後、お祖母様からリアンに……それから、私達にも、話が有った。お前とリアンの婚約の事だ」
兄の言葉に、ローゼルは身を固くしました。
昨日は、婚約式の最後の最後で、見合い相手の従兄弟のリアンを断って、祖母である大奥様に言われるがままに、部屋を出て来てしまったのです。ビスカスに部屋まで送って貰い、結婚を迫った末に、どうにか承諾して貰ったのでした。
「はい……」
微かに背後の風が動いて、ローゼルはビスカスがいつの間にか自分の横の、少しだけ後ろに控えた所に立って居る事に気が付きました。ビスカスがそこに居てくれるだけで、ローゼルは、兄のタンム卿や父の領主様や祖母の大奥様、そして見合いを破談にしてしまった従兄弟のリアンなど、これから会って話さなくてはいけない人々に、向かい合う勇気が湧く様な気がしました。
(しっかり、話をしなくては……私が決めた事なんだもの)
ローゼルがちらりとビスカスの方に目をやると、ビスカスは小さく頷いてくれました。
「……お兄様。リアンとの婚約式を途中で退席して、台無しにしてしまった事に付いては、大人気なく申し訳無い事をしてしまったと思っています。ご迷惑をお掛けして、本当に御免なさい。お兄様だけでなく、お祖母様にも、お父様にも、お義母様にも、後程お一人お一人に、きちんと謝りに伺います。リアンに対しても、もう一度改めて謝罪をして、どんなお詫びで、罰でも、出来る限りの償いは致します。……でも」
ローゼルは一度言葉を切って、知らず知らずの内に急いて来る呼吸を整えました。
「……リアンとの婚約だけは、出来ません。以前、壊れた話だけれど……ビスカスを婿に取る事を、許して下さい」
タンム卿は驚いた顔で、ローゼルと、後ろに控えているビスカスを見ました。彼の妹は頑固で強情で思い込みが強く、自分の非を認める事は滅多に無かった筈でした。そのローゼルが、素直に自分の気持ちを話し、頭を下げて謝罪をしているのです。タンム卿は驚いた顔を緩めると、ほんの少し淋しそうに微笑みました。
「……ロゼ。お前の今の気持ちは分かった。その上で少しだけ、私の話を」
「ローゼル!!」
タンム卿が静かに口を開いた時、扉が乱暴に開かれて、金切り声と共に数人の人影が現れました。