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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
「お嬢様っ!?動かねぇでっ!!」
ビスカスは思わず寝台から飛び降り、飛び降りた事で空いてしまった布団の隙間にはっと気付いて丁寧すぎる程丁寧に塞ぎ、ローゼルが寒くないかどうかを慎重に確かめながら、そう叫びました。
「え?どうして?」
いちゃいちゃしながら布団に包まりぬくぬく過ごす冬の朝……というにはいささか昼に近いかもしれない楽しい時を味わっていたローゼルは、ビスカスが抜け出た事とお嬢様呼びと突然の叫びに眉を顰めました。
「とにかく、そのまま!そのまま起き上がらねぇで!んで、お待ちになってて下せぇやしっ!」
そう言ってビスカスはあたふたと動き始めたのですが、その後何をどうしたのか、ビスカス自身さえ記憶が定かでは有りません。
多分、何か適当な物を着て、どこかで湯と水とタオルを調達し、急いで戻ってローゼルの汚れを温かいタオルで拭い、内出血を冷たいけれど冷た過ぎないタオルを使ってせっせと手当てした……筈です。
「お嬢様っ、何て有り様にっ……!誠に、申し訳御座いやせんっ……!」
ローゼルは、ビスカスが全てを注ぎ込んで傷一つ付けない様に大事に大事にお守りしてきたお嬢様なのです。それなのに。
(なのにぶっ掛けたまま寝ちまうだとか歯形だの吸い痕だの付けちまうだとか、俺って奴ぁ今までの苦労を全部水の泡にしちまいかねない非道な真似ををぉぉおおお!!)
ビスカスは自分が情けなさ過ぎて、本気で泣きそうになりました。
(そりゃあ、ヤるなぁ仕方ねぇですよ?婿になった以上、子作りは義務でも有りやすしね?で、どうせヤんなら気持ち良い方が良いに決まってらぁね?その方が孕みやすくなるって話も有るからね?……だけど、)
ビスカスはローゼルの背中を湯で絞ったタオルで蒸らしながら、涙を拳でこそこそ拭いました。温かくて気持ち良いのか、猫の様に喉を鳴らしそうにご機嫌なローゼルのうなじには、目を背けたくなる様な噛み痕がありありと見て取れました。
(……だけど、こりゃあ違うだろ!ぶっ掛けたまんまじゃ汚ぇし、お嫌に決まってんだろ!歯形付けたらみっとも無ぇし痛ぇだろ!何だ、何考えてたんだ、昨日の俺!いや、何もーーお嬢様の事さえも、考えて無かったって事なのか……!)
「ビスカス?」
「へえ……すいやせん……」
ローゼルは、しおしおと生気をなくしているビスカスの名を呼びました。