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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
「頂いたのよ、スグリ様に。それを昨日、こっそり口に入れてたの」
「え」
(その酒ってなぁ、まさか)
ビスカスは衝撃を受けました。
スグリに譲って貰ったと言うことは、出所は都かサクナかのどちらかでしょう。しかし、いくら何でもスグリが都で自力でそんなものを手に入れるとは思えません。と言うことは、サクナが作った酒でしょう。
(……俺がサクナ様に頂いたのと、同じ酒……お嬢様に俺が使って、お嬢様がお飲みになったのと、同じ酒……)
ビスカスは、ローゼルが酔っ払った時の事を思い出しました。胸が大きくない事を気にしたり、遠慮無しに甘えて来たり、痴態を素直に曝して来たりはしましたが、どれも可愛く愛おしく、何の罪も無い物でした。
「お願い。私の前では、我慢しないで?たまにで良いから、そういうビスカスも見せて欲しいの」
ローゼルが懇願する様に言った言葉は、前半分が頭の中でがんがんと鳴り響き、後半分は頭に入って来ませんでした。
(我慢しねぇで、って……俺が我慢が出来なくなった結果が、これって事ぁ……)
ビスカスが昨日仕出かした事は、我慢が出来なくなる酒のせいだとローゼルは言いました。つまり、昨日の様な事をしたいと本当は思っているけれど、普段は我慢していると言うことです。たまたま訳が分からなくなって、思わずした事では無いのです。
(腹の底じゃあ、お嬢様を痛い目に遭わせてぇって思ってるんなら……俺ぁ、あの坊ちゃんと同じだって事に、ならねぇか……?)
ローゼルの胸に抱かれて温かい筈なのに、ビスカスは、ぞっと背筋が凍りました。
自分がローゼルの為を思って退けた結婚相手と自分とは、似たり寄ったりだったのです。
表面はどうあれ、一枚めくった自分の心の奥底には、ローゼルを傷付けたい思いが有ったのです。
あの時リアンに向けた感情よりも遥かに強い、憤りとさえ言える怒りが瞬時にして燃え上がり、自身を激しく焼きました。
「……俺ぁ……自分が、許せやせん……」
ビスカスはローゼルに優しく抱き締められながら、放心した様に呟きました。