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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
*
「本当に、助かった。君達に頼んで良かったよ」
「誠に有り難きお言葉、恐縮で御座います」
(相変わらず、外面大王だねー……「クッソめんどくせー仕事よねー!とっとと片付けて帰るわよ!!」って言ってたよなー……)
ビスカスは依頼主の御前で頭を下げながら、隣で口上を述べている兄弟子をちらっと見ました。
(しかし、こんだけの事に兄さんが出張って来たって事ぁ、ここぁ相当な家柄って事だよな……)
頼まれた仕事は、盗まれた宝飾品を秘密裏に取り返すという事でした。それを受け継ぐ儀式が近々有るとかで期限が決められて居り、盗んだ相手も盗まれた事自体も表沙汰に出来ない事情が有るとかで、遠方であるにも関わらず兄弟子の所に話が持ち込まれたのです。
しかし、兄弟子本人が出向くというのは、滅多に有ることでは有りません。今回は、育成も兼ねて若手を一人と、「小さい奴が必要ね!鍵開け出来るし、丁度良いわ!」と言われて何故かビスカスも連れて来られておりました。しかし本来は、頭がひょいひょいどこかに出掛けて行く事は、組織の為には良くありません。
ビスカスは頭を垂れながら、とにかくこれで終わっただろうから早く帰して欲しい等と、ぼーっと思っておりました。
「家の宝を取り返して下さって、ありがとう。心から御礼を申し上げるわ」
「麗氷の百合と謳われた奥方様からのお言葉、有り難き幸せに存じます」
「れっ……」
兄弟子の連ねる美辞麗句を何の気なしに聞いていたビスカスは、叫びそうになるのを押し止めました。
(ちょ!麗氷っ!?)
ビスカスが動揺して兄弟子を見ると、口の端だけほんの微かにあがりました。
(だ……騙された?!……ってか何で……!!!!)
麗氷の、という部分で凍り付いたので、その先は聞き取れておりません。
(お嬢様のお母様が薔薇だろ……残ってんなぁ百合か鈴蘭……でもって、百合の方だったら……)
麗氷の百合と呼ばれていた奥方様の居る館なら、子供に当たる次代の百合が居る筈です。
薔薇と鈴蘭を継いだのは女子ですが、百合の家には男子しか生まれなかったので、男性が名を継いでいます。
現在百合を継いで居るのは、ローゼルの従兄弟であり見合いの相手でも有った、この家の末っ子ーー
ビスカスが坊ちゃんと呼んでいる、リアンでした。