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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

「はい。領主様御夫妻からのご希望で、後程一緒にお食事を、との事だそうで……お急ぎでしょうが、少々逗留頂けないかと」

 弟弟子は姿勢を正して、生真面目に答えました。

「食事か。その位はお付き合いさせて頂くか……なあ?」

 兄弟子は少しだけ考えた後、にやぁと笑ってビスカスの肩に手をぽん、と乗せました。

「お食事の席なら、ご家族が皆様お揃いになるかも知れないしなーあ?」
「……うっ!!」
「皆様は、分かりませんが……少なくともお声掛け下さったご領主様と奥方様は、同席なさるでしょうね。それにしても」

 顔も姿勢もぴしりと正して報告していた弟弟子は、少しくしゃっと力を抜いて、夢見る様に微笑みました。

「……お綺麗な方でしたね、奥方様……」
「お前、面食いだったのか?」
「面食いって事は、有りませんけど……美人は、この世の宝でしょう?」
「ほー?じゃあ、良いこと教えてやろうか?この館の奥方様は、こいつの嫁御の親戚だぞ」

 兄弟子のからかいに弟弟子は食い付き、ビスカスは知らぬ顔を決め込んで水をやたらと飲みました。

「ええっ!?兄者、奥さん居たんですか?!」
「……あー、うん。居る」
「ご親戚って事は、もしかして、奥さんも、美人ですかっ?」
「あー……うん……まあ……」
「こいつの嫁御は、美人どころじゃ無いぞー?」

 ビスカスの奥歯に物が挟まった様な物言いと逆に、兄弟子は弟弟子を焚き付けました。

「控え目に言っても絶世の美女だ。なー?」
「ちょ!止めて下せぇよっ!」
「絶世の、美女ですか……!じゃあ、」

 弟弟子は目を輝かせ、兄弟子とビスカスは、こいつやっぱり面食いか、と思いました。

「率直にお聞きしますけど、噂に高い水晶の薔薇様と、兄者の奥さんだったら、どちらがお美しいですか?」
「ぶっ!?!?!?!」

 ビスカスは突然聞かされた愛しい女の通り名に、飲んでいた水を吹き出しました。

「おー!!お前、水晶の薔薇様を知ってるのか?」
「はい!子供の頃、南の収穫祭に連れてって貰って、その時に……踊ってらっしゃるお姿と、ご尊顔を拝しまして……」

 弟弟子は、うっとりと空中を見詰めました。
 
 
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