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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

「本当に、お名前通り、凛とした気品が匂い立って、俺の見ている遠くまで薫ってくる様なお美しさで!!……何でも言うこと聞くからって親に泣いて頼んで、小さな肖像画を買って貰いました!!俺の一生の宝物です!!」

 賛辞は、滔々と語られました。

「まー……こんな所にまで、熱烈な崇拝者が居たもんだわねーえ……」
「……兄さん……地が出てやすよ……」

 長々と続く熱弁に、思わず素に戻ってにやついた視線を向けてきた兄弟子に、ビスカスは無表情かつ小声で釘を刺しました。
 ……しかし。

「崇拝者ですって?勿論です!心底崇拝申し上げて居りますよ!」

 弟弟子はいつもと違う兄弟子の口調など全く気にも留めず、「水晶の薔薇」を熱を込めて賞賛しました。

「水晶の薔薇様……あの方は、俺の理想の……いや、理想以上の女性です!永遠の憧れです!!!地上に遣わされた、女神様です!!!お会い出来る僥倖に与れる地に生まれる事が出来て、本当に、良かったです……!!!!」

「……だってよー?」
「……ほんっと、やめて……おねげーですから、やめてくだせえ……」

 ビスカスは弟弟子の賛辞を聞いて、顔から火が出て悶絶しそうになりました。まるで自分が言っているのかと思える様な、言葉の数々だったからです。言われる事がいちいち全部もっとも過ぎて、どれも皆全て頷け過ぎて、反応したなら首が体からもげそうです。

(……俺ぁ……俺も……もしかして他人から見たら、こんなにこっ恥ずかしいのか……?!)

 無論、こっ恥ずかしかろうがとち狂って見えようが、ローゼルを誰より崇拝し愛し全身全霊で尽くし続けていく事を変える気持ちは、髪の毛の先ほども有りません。

「……ぷっ!この子、最初はあんなにアンタに突っかかってたのに……夫婦揃って、懐かれ過ぎてるわねーっ!」
「や、んな事ぁ」

 兄弟子が耳元で可笑しそうに囁きましたが、ローゼルと同列に並べられるのは、恐れ多過ぎます。
 ビスカスは、反論しようとしましたが。

「……ビスカス?」
「え?」

 扉が開かれ、部屋の外に居る人物に、名を呼ばれ。

「やっぱり、ビスカス!!」
「あ……!」

 ビスカスと連れの二人の男達は、声も出せずに固まりました。
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