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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
「ビスカス。あなた、子を産めて?」
「ええぇぇっ!?!?」
マリアの例えは、極論でした。
「あなたがロゼに傷一つだって付けたくないと思う気持ちは、よく分かるわ。ロゼをずっとそうやって大事にして来たのを、見ていたもの。でも、夫婦になるなら、それをずっと続けることは無理だと思って置いた方が良くてよ。お産ひとつを取ったって、ロゼがどんなに辛くても、代わってやる事も、痛みを無くしてやる事も、貴方には出来ないのよ?」
「うっ……」
「貴方はこれから、ロゼの辛さを避けてやろうとするのではなく、辛い思いをしているロゼを、そのまま支える事を憶えなくてはいけないわ。その事で自分を責めたくなる時が有るかもしれないけれど、それは男の傲慢と言うものよ」
ビスカスは、ぐうの音も出なくなりました。
マリアが言った例えは、極論ですが、正論です。
今のビスカスにとって、それはとても的確な忠告でした。
押し黙ってしまったビスカスを見やってお茶を飲みながら、マリアは全く違う話を口にしました。
「貴方、狩りをしたことは有る?」
その質問を聞くや否や、ビスカスはマリアと見えて以来初めて、気配をがらっと変えました。
「……狐狩り程度なら」
しかし、そのひやりとする鋭さはすぐに消え、何事も無かったかの様に返事がマリアに返されました。
「……そう。貴方も自分以外の命に、血を流させた事が有るのね」
マリアは菓子をひとつ取って食べ終えると、ビスカスににっこり温かい笑顔を向けました。
「自分が他の命の上に生きている事を知ってる者は、何かを意味無く傷付けたりは出来ないものよ。自分を許して、そして信じてお上げなさいね」
ビスカスはそれを聞いて、我に返った様に、はっとしました。
それからとても言い難そうに、口を開けたり閉めたりするのを、繰り返し。
「……あのう……マリア様、っ?」
何度目かでやっと、思い切った様に目の前の女性の名前を呼びました。