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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

「リアン様に、正式な結婚のお許しを頂きに参っておりました」
「何だと?!」

 それまで不機嫌そうにイライラと椅子の肘掛けを指で叩いていた領主様は、顔色を変えました。

「北に行ったのか、この時季に?!」
「はい。お会いして、直接謝罪しました。すぐにではなくても、リアン様がそういうお気持ちになられた時には、私達の結婚を許して頂けないかとお願いするつもりでした」

 それを聞いたタンムが、疑問を口に致しました。

「……つもり、って?断られたのか?」
「いいえ」

 ビスカスは下げていた頭を上げて、義父と義兄を順番に見ました。

「結婚も、正式な婚礼も、認めて頂けました」
「何っ!?」
「ほう」

『……ロゼの幸せの為になるなら、どの話でも好きに使って』

 ビスカスは、義理の従姉弟の心遣いに感謝しながら、北の館の家族しかまだ知らない事を告げました。

「リアン様は、ご結婚が決まられたそうです」

「え!?」

 二の句が継げない二人に向かって、ビスカスは言葉を続けました。

「この季節ですし、ご事情も有って、まだ公に発表しては居ないとのことですが……それも有って、私達の事も快くお許し下さいました」
「……なんと!」
「へえ。お相手が、見つかったのか」
「はい」

 ビスカスは、頷きました。
 結婚相手が誰かと言うことや結婚に至った事情等々は、ビスカスが伝えるべき事では有りません。

「ご結婚に関する正式な報せは、近々使者を送られるとおっしゃっておられました」
「そうか……それは、良かった……!」

 ほっとした様に頷く領主様を見たビスカスの中に、むずむずと落ち着かなさが湧き上がって来ました。
 そろそろ聞いてみても、構わないでしょうか。

「あのー……それで……リっ…………ロー…………お嬢様、は?」

 領主様の微妙な反応を見てビスカスは呼び方を二度変えましたが、返事をしたのは、領主様では有りませんでした。

「ビスカス。残念ながら、ロゼは家には居ないんだ」
「え」

 ビスカスは、血の気が引きました。

(まさか……俺が帰って来ねぇからって、リュリュまで家出を……?!)

 呆然としていると、タンムが苦笑混じりに告げました。

「ちょっと、事情が有ってね。柊屋敷に世話になってる」

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