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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題
*
(……ここよ)
(……)
ビスカスはスグリと一緒に、柊屋敷のとある一室の前に立っておりました。
中に入れば寝台が有る夜の客間の扉の前で、二人きりです。
普通であればサクナが見たら怒り狂いそうな光景ですが、今日に限っては、了承済みでした。
ビスカスは小一時間程前に、柊屋敷を訪れました。
夜であるにも関わらず、家令のクロウは驚きもせず淡々とビスカスを迎えました。挨拶を交わした後、少しここで待つようにと、居間ではなくて客間の一室に通されました。
しばらくの後、そこにサクナが現れました。ビスカスがどうしていたのかを尋ねられ、ローゼルの状態を教えられ、ビスカスへの苦言と励ましを貰いました。
そこでスグリが部屋にやって来て、文句とお願いを聞かされました。最後に「一つだけ約束してくれないと、ロゼには会わせてあげないわ」と条件を出されて謝り倒しながら約束をして、ようやくここに案内して貰ったのです。
(……ここよ。静かにね)
(ありがとうごぜぇやす)
(眠ってたら、起こしちゃダメよ)
(へい。一目顔を見たら、さっきのお部屋に戻って、休ませて頂きやす)
(……ビスカスさん?)
(へい?)
(起こしちゃダメだけど、もしロゼが起きてたら、わざわざ戻らなくっても良くってよ)
「……へっ?!」
思ってもみなかった事をスグリに言われ、それまでの囁き声での会話ではなく、普通に声を出してしまいました。
(しーーーーーーっ!)
(あ……すいやせんっ)
(じゃあね。ロゼを、宜しくね)
(へえ。本当に、色々、ありがとうごぜぇやした。おやすみなさい、スグリ様)
踵を返しかけたスグリから、ふふっと笑った気配がしました。
(良い夜をね。おやすみなさい、ビスカスさん)