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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

 ビスカスは、去っていくスグリを見送ると、渡された鍵を扉に差しました。
 そっと回して静かに解錠し、扉を軋ませないように気を付けながら体が通れる分だけ開くと、猫の様に音を立てずに部屋の中に入りました。
 足音も気配も殺して寝台に近付くと、ローゼルがひっそりと眠っておりました。

(……ただいま、リュリュ)

 ローゼルの寝顔を見たビスカスは、緊張が解けて口元が緩みました。

 ほんの少し眉根を寄せている様にも見えますが、変わらずに美しく健やかな寝息を立てている事に、ビスカスは安堵しました。

(触りてえ……けど、)

 髪を撫でたり頬に口づけたりしてみたいとも思いましたが、起こしてしまってはいけません。

(おやすみ、リュリュ)

 へにゃっと笑うともう一度ローゼルの姿を目に焼き付ける様にまじまじと眺め、寝台に背を向け、抜き足差し足で扉の前まで歩いて来た、その時。

「……んぅ……」

 寝台から、ローゼルが寝返りを打つ音が聞こえました。

(起き……ちゃ居ねぇよな?)

 振り向いて遠目で見てみましたが、ころんと転がって自分に背を向ける寝姿になったローゼルには、起きる様子は有りません。

(んな都合の良い事ぁ有る訳ねーよなー。また明日だ、明日)

 今度こそ扉を開けようと、そっと取っ手に手を掛けかけて。

「……ビスカス……」

 くすんと鼻を鳴らす声がした様に感じて、そうっと振り向いたビスカスは、そのままそこで、固まりました。
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