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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

「……ビスカスっ……?!」
「へい……」

 見つかってしまったのですから、仕方有りません。ビスカスはローゼルの寝台に歩み寄りました。

「……本物っ?」

 近くに来ると、闇の中でも驚いた顔がしっかり見えます。
 その目に、涙が溜まって居ました。驚きと喜び、それに先程達した快感の混じった涙でしょうか。

(ああ……抱き締めてえ……)

 愛おしさと欲望が同時に込み上げ、力を込めて返事をしました。

「へい。ただい……ま゛っ!?」
「ここでっ、何してるのよーーっ!!」

 ビスカスは、羽根枕で思いっきりぶっ叩かれました。

「っわ、リュ……っ、止め、っぷ」
「馬鹿馬鹿馬鹿!最低っ!!変態っ!!」
「すいやせんすいやせんすいやせんすいやせんっ!!!!」

 ばしばし叩かれながら、ひたすら謝りました。
 どんな形であれ、やっと愛しい女の元に帰って来たのです。せっかく目覚めているローゼルに会えたのに、叩かれた位で怯んでは居られません。
 しばらくするとローゼルは叩き疲れたのか、はあはあ息を弾ませ枕を放り出し、寝台に突っ伏しました。

「……もうっ、知らないっ……!……恥ずかしいっ……消えちゃいたいっ……家出したいっ……!!」
「ええっ!?そりゃダメです、家出はダメっ!!」
「自分は、した癖に……!!」
「うっ」

 キッと睨まれて、冬の夜なのに脂汗が出ます。

「もう、お嫁に行けない……」
「もう嫁ですけど」

 訂正されたローゼルは、また激高しました。

「馬鹿っ!!意地悪っ!!」
「へい」
「女の敵っ!!鈍感っ!!下品っ!!」
「その通りで」
「出てってっ!もう、帰って来ないでっっ!!」
「リュリュ」

 困り果てて名を呼ぶと、ローゼルははっとしてビスカスを見上げて身を起こし、袖をぎゅっと掴みました。

「待って、駄目っ……今のは駄目よ、取り消すわ……」

 ローゼルはビスカスにぎゅうっとしがみ付きました。

「行っちゃ駄目、絶対駄目っ」
「リュリュを置いてなんか、どこも行きやせんよ」
「うそつきっ」
「ほんとです。毎日淋しくて堪んなかったです。すげー後悔しやした」
「…………私も、淋し……っ……」
「泣かねーで、リュリュ……今度は、一緒に行きやしょうね」
「んっ……」

 こくこく頷く顔を上げさせて口づけすると、ビスカスはそのままローゼルを寝台に横たえました。
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