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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
*
「おはよう、ビスカス……」
「おはよーごぜぇやす、リュリュ……」
久し振りに愛を交わした翌朝。
二人はまずは抱き締め合って、目覚めて真っ先に会うのがお互いだと言うことの幸福を、全身で味わいました。
「……起きて、帰り支度しねぇとですね」
妻の髪に口づけて顔を埋めたビスカスは、起きる気配も動く素振りも全く見せずに呟きました。
「もうちょっと、こうしてたいわ……」
「や、でも、余所のお宅ですからねー」
冷静に起床と帰宅を促している様に聞こえますが、やってる事は朝っぱらからイチャイチャしているというだけです。
「じゃあ……こうしたら、どうかしら」
夫にあちこち口づけられながら、ローゼルは一つの提案をしました。
「こうやってゴロゴロしながら、ビスカスがどうして予定通り帰って来なかったかを、聞かせて貰うって言うのはどうかしら」
「えっ」
「そうしたら、起きてから話を聞く時間が、短くなるでしょう?その分、こうやってくっ付いて居られるわ」
「……そうですね……」
そんなに時間の短縮になるもんだろうかとか、館の自室に帰ってから話しても良いんじゃないかとか。
ビスカスの頭を色々な事がよぎりましたが、もうちょっとこうして居たい気持ちはローゼルと全く同じだったので、その提案に乗りました。
「最初は、修行先に結婚の報告に行ったのよね?」
「へい。修行先ぁ俺の居た頃とは代替わりして、兄弟子が師範になったんですよ。その兄弟子への挨拶も兼ねて、師匠の墓前に報告して来るつもりだったんでさあ」
「報告とご挨拶なら、そんなに長くかからないわよね?」
「うっ」
ビスカス曰く「おっ立ってる」何かに気付いたローゼルに玩具の様に弄られて、ビスカスは短く呻きました。
「どうして、その後帰って来なかったの?」
「それは、ですねー……」
ビスカスは、妻の手悪戯を自分の手でたしなめながら、遠出する事になった経緯を話し始めました。