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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇

「あなたを仕事に連れて行きたくなってしまったのは、仕方ないと思うの」
「へ?そこは酷くねんですか?」
「だって、ビスカスは、優秀ですもの。凄く頼りになるんだもの、連れて行きたくなるに決まってるわ。向いてるお仕事だったのなら、尚更よ」
「……リュリュ……」

(急に、そんなに褒めちぎられちゃ……心臓が、ばくばくしやす……!!)

 ローゼルに当然の様にさらりと絶賛されて、ビスカスは思わず真っ赤になって、耳まで熱くなりました。

「でもね!」
「へいっ!」

 さらっと褒めまくった後のやけに力んだ物言いに、ビスカスは身構えました。

「私、ビスカスを捨てたりなんか、しなくってよっっ!」
「ぷっ」

 言葉の力強さと内容の可愛さの落差に、身構えた体が脱力しました。
 思わず吹き出してしまいましたが、そんな事で妻のご機嫌が斜めになっては困ります。ビスカスは笑ったのを誤魔化す為に、艶々した緩やかな巻き毛を分けて、賢げなおでこに口づけました。

「酷ぇってな、そこですかー……ありゃあ、兄さんお得意の、軽口ですよ。本当にそう思ってたら、言えねーでしょ」
「軽口でも、同じだわ!前にも言ったじゃないの。あなたが居なくなったら、他の護衛なんて要らないって……ビスカスじゃなきゃ、駄目なんだもの!私、何が有ったって絶対に、あなたを捨てたりしないんだから!」
「ぶっ!!」

 力強く凛々しい宣言ですが、内容はほとんど愛の告白です。本人はそれに気付いて居るのか居ないのかと、ビスカスはますます可笑しくなりました。

「何笑ってるのよ!」
「や、すいやせん……ちょっと……ツボにふぁひっふぇ」

 ローゼルはビスカスの両の頬っぺたをつまんで、むにゅっと左右に引っ張りました。

「とにかく!今度お会い出来たら、はっきり言っておかなくっちゃ……ビスカスは、絶対にあげません!って」

 激しい言葉と共に頬っぺを離され首にぎゅっと抱き付かれて、ビスカスの相好はへにゃへにゃに崩れました。

「……俺の主様ぁ、頼もしいですねー?そんなに俺の事を買って下すって、ありがとうごぜぇやす」
「主として、じゃないわよっ!」

 ローゼルはビスカスを、上目遣いで睨みました。
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