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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「もちろん、主としてだって、誰にもあげるつもりなんか無いけど……妻としてだって、女としてだって、ビスカスは、誰にもあげないんだからっ」
「へ?」
ローゼルは、またビスカスの胸に顔を伏せました。
「……おっぱいおっきい女が誘って来たって、お前より小さくて可愛い若い女が言い寄って来たって、ふらふらそっちに行ったりしたら、駄目なんだからっ!!」
「……リュリュ……」
ビスカスは、愛おしさで胸が一杯になりました。
自分でなくては駄目だと言い張り、誰にもやらぬと憤慨し、他の女に靡くなと命じているのは、ビスカスがずっと何より大事にして来た、この界隈に知らぬ者は無い生ける宝石「水晶の薔薇」なのです。
それ以上、欲しい物など有るでしょうか。
「何処にも行きやせんし、誰にも目移りしやせんよ?……もし万が一首んなったら、別の仕事に就くって言いやしたよね?」
そう言うと俯いた顔を上げさせて、薔薇の花片の様な唇に、ちゅっと啄む様に口づけました。
「ずっとお傍に居てぇから、俺ぁ護衛になったんですよ……俺のがずーっと、リュリュじゃなきゃダメなんでさあ」
「……ビスカス……ん……」
ローゼルは夫に目で口づけを強請り、その望みは存分に叶えられました。
「こうやって夫婦になったのに、まだ正式じゃ無いなんて……結婚したって事、早く誰にでも言える様になったら良いのに……」
「……なりやすよ」
ビスカスは妻の唇に触れたままで言いました。
「え?」
「さっき話した仕事を頼まれて引き受けたお陰で、俺ぁ北に行くことになったんです」
ビスカスは、北での事を、語りはじめました。
*
「……ただいま。」
扉が、軽く叩かれ、開かれて。
ぶんむくれたリアンが、戻って来ました。
「お帰りなさい、リアン」
マリアは艶やかに微笑んで従兄弟を迎え、二人並んで、ビスカスの向かいの長椅子に腰掛けました。