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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「……ですから、」
ふっと、空気が緩みました。
リアンとマリアは、気付かぬうちに息を詰めていた事に気付いて、無意識にふーっと深呼吸しておりました。
「たとえ相手が家族でも主でも、脅されて拷問されたとしても、ご依頼の件を言い触らしたりゃあ、致しやせんよ。それが、最低限の矜持です。それを無くしちゃあ、俺達みてぇなのぁ、お仕舞ぇです」
けろりと告げるビスカスを見て。
二人は改めて、彼等の従姉妹を守っているのがどんな男なのかを、思い知りました。
「……悪かった。」
リアンは、ぽつりと口を開きました。
「君と君のお連れの方達に、大変失礼な事を言った。謝罪させて欲しい。……申し訳無かった」
「リアン……!」
リアンはマリアの手を握って軽く頷くと、微笑み返しました。
「そして、家の宝を取り戻してくれた事に、改めて感謝する。本当に、有り難う」
「っや……そんなに言って頂く程の事じゃ……」
貶められた後に持ち上げられ、急降下から急上昇といった物言いです。
そんな、リアンからは全く受けた事もない扱いを受けたビスカスは、慣れない事に照れました……が。
『アンタ!謙遜してそのお従兄弟さんに、『俺は、何にもしてませーん!知らないうちに連れて来られて働かされて、気が付いたらこーなってたんですぅー』なんて間抜けな事言っちゃ、ダメだからねっ!!!!』
この部屋に来る前に、兄弟子に言われた言葉が蘇りました。
(やべーです、兄さん!!今まさに、それ言っちまうとこでしたぁああああ!!)
ビスカスは小さく咳払いして落ち着いて、言葉を選んで口にしました。
「……昔馴染みの仲間達の、働きのお陰です。俺ぁ今は、あちらを離れてますんで……ローゼルっ……様の、護衛ですから」
「良いよ、もう。」
「……へ?」
ビスカスの言葉を神妙に聞いていたリアンが、突然投げ遣りに言いました。