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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「もう一度、ちゃんと言わせて下せぇ。ご結婚、誠におめでとう御座います。俺の修行先の方じゃあ、姉さん女房にゃあ金の果物くらいの価値がある、って諺が有りやす。素晴らしいご夫婦になられるに違ぇねぇです。……お幸せを、お祈りしやす」
「ありがとう、ビスカス」
マリアは嬉しげに微笑み、今度はリアンも素直に、喜び一杯の笑顔を見せてくれました。
そうして笑うと、神々しい位に美しい、絵に描きたい様な似合いの夫婦です。さすがはローゼルの従姉弟達、麗氷の百合と鈴蘭の息子と娘でありました。
「それにしても、随分早くご結婚が決まられたんですねー」
「それも嫌味?」
「や、そういう訳じゃ」
「誰かさんのせいで、傷心で戻って来たからね。僕を慰めて励まして、支えてくれたのが、マリアだったんだ」
「そうとも言うかしらね……?実際は、涙を拭いてあげてお尻を蹴飛ばして、檄を飛ばしたんだけどね」
「それで、一生を共に過ごしたいのはこの人だって確信したんだ。マリアが居てくれたから、僕は立ち直れた……その上、子にまで恵まれて」
「こっ!?」
幸せそうな二人の驚きの告白に、ビスカスは硬直しました。
子に恵まれたと聞こえましたが、ローゼルとの見合いが破談になってから、まだ三月も経って居ない筈です。
「お子様……がっ……?!」
「ええ。私、女らしくも無いし若くも無いから、家の者もみんな、諦めてたのよ。私は一生、嫁ぐことも子を産むことも無いだろう、って」
「そんな事無いよ!マリアは、素敵だよ……子を授かったのは、僕達の相性が良いって証しだと思うんだ」
「ありがとう、リアン……そうだったら、嬉しいわ……!」
(ずっ……随分お手が早ぇ坊ちゃんだぁねえ……!!)
思い返してみれば、ローゼルに対しても、かなり押しが強かったのです。もしローゼルがリアンの押しに負けていたり、あのまま結婚していたら……とちらっと浮かんで目眩がしたので、ビスカスは二度と考えるまいと思いました。
「だから、早く正式な婚儀を挙げたかったんだ。マリアとお腹の子に安心して過ごして貰って、元気な赤ちゃんを産んで欲しいからね」
リアンはそう言うと、まだ全く身籠もっているとは分からない、マリアのお腹に手を当てました。そしてマリアと愛おしげに見詰め合った後、少しだけ不服そうに言いました。