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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「本当は、狩りも止めて貰いたいんだけど……」
「あら、リアン。私はあなたが生まれる前から、狩りをしてるのよ?それに、私をずーっと家に閉じ込めて置いたりしたら、どんどん太って部屋から出られなくなってしまうわ!」
「そうは言ってもなぁ」
「大丈夫よ、無理はしないわ。気遣ってくれてありがとう、心配性で優しい旦那様」
(こりゃあ……お見事!って奴だぁねー)
マリアがリアンの頬に口づけるのを見たビスカスは、心の中で感嘆しました。
(坊ちゃんは、どーしよーもねぇ坊ちゃんなのかと思ってたが……マリア様の手に掛かると、すげぇ良い旦那っぷりじゃねーか……)
『リアンとロゼが一緒になるのは、無理よ。我が儘放題甘え放題の、末っ子同士なんだもの。上手く行きっこ無いって、皆どうして分からないのかしら』
(なるほどねー……こういう事か……)
ビスカスは、マリアの言葉を思い出しました。
マリアはリアンの言い分を聞き、良いところは上手に立てて褒めてくすぐり、改めた方が良いところはぴしりとたしなめるものの後には引きずらず、大らかに陽気に接しています。
確かに、ローゼルではこうはいかないでしょう。ビスカスはリアンを上手く掌で転がすマリアの手腕に、感心しました。
見られているのに、気付いたのでしょうか。リアンが一瞬はっとしました。
「……とにかく、僕は今、これ以上に無いほど幸せなんだ。結婚して、秋には父親にもなる」
ビスカスが居るにも関わらず、マリアとべたべたしたのが気まずかったのか、しゃんと座り直しました。
「マリアが言った様に、僕らの幸せは、君達のお陰と言えなくもない。少なくとも百合の印の件は、確実に君とお仲間のお陰だ。僕は、恩知らずでも人でなしでも無い。君とロゼ姉さんが僕のことを気にしてくれて結婚を公に出来ないと言うのは、僕にとっても決して嬉しい事では無いよ」
「リアン様……」
「僕達は僕達で幸せになるから、君達も僕の事は気にする事なく幸せになって欲しい。これは、僕からのお願いだと思ってくれ」
「ビスカス?」
「へい」
「あなた、さっき、仕事として依頼された内容は、たとえ主でも家族でも、口外しないと言ったわね?」
「……へえ」
「今回は、その気遣いは無用になさって。ロゼの幸せの為になるなら、どの話でも好きに使って」
「え……ですが」
ビスカスは、躊躇しました。