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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
依頼者が良いと言ったとしても、そうですかと聞ける話では有りません。依頼者が直接誰かに話す分には構いませんが、仕事を請け負った側からは、誰が何と言おうが依頼の内容に関しては本人以外には伝えてはならないというのは、曲げられない仕事の原則でした。
「あなたが真面目なのは、知ってるわ。そうよね、決まりは決まりよね」
返事が出来ないビスカスを見て、マリアは薄く微笑みました。
「でも、ロゼは私達の身内で、大事な従姉妹よ。困り事が解決した以上、切ない気持ちを長引かせる様なことは、したくないの。すぐ会えるのなら私から経緯を話して、直接あなた方の結婚を祝福したい所だけれど……この体だし、この時季でしょう?」
マリアはお腹を愛おしげに撫でました。
「今すぐロゼの所に出向く訳には、行かないもの。……私からあなたに代理をお願いしたとでも、思って頂けないかしら?」
「ビスカス」
マリアの言葉を聞いても黙り込んだままのビスカスに、リアンも話し掛けました。
「僕からも頼む。依頼主は表向きはお母様だけれど、百合の印を必要としていたのも僕だし、偽物に擦り替えられてしまう原因を作ったのも僕なんだ。その僕のお願いでも、聞くことは難しいかな?」
「……う……」
「それに、君は、必要以外の事を面白がって話す様な奴じゃないだろう?……以前は、そう思ってたけどさ」
「リアンったら」
マリアに軽口をたしなめられて、リアンは悪戯っぽく笑いました。
「お許し頂き、有り難うごぜぇやす……ですが……お二人のお気持ちは、大変、有り難ぇんですけど……」
「あーもう、固いなあ!そうか、分かったよ。それなら僕にも考えが有る!」
ためらい続けるビスカスに、リアンは遂に痺れを切らして立ち上がりました。
「君に、正式に仕事として依頼する!今回の件をロゼ姉さんに伝えて、僕達が結婚を心から祝福している事をよーく話して、分かって貰ってくれ。その際、」
リアンはビスカスを見下ろして、にやぁっと笑いました。
「頭の固いご主人には、同席して貰わなくたって構わないからねっ!」
「へっ?」
「まあ、リアン!名案ねえ!」
「だろう?これで解決だよ、マリア!」
……こうしてビスカスはリアンから婚姻を公にして婚儀を行う許しを貰い、リアンとマリアの結婚を含む一連の話をローゼルに伝える事を、請け負ったのでした。