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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇

   *

「……ってな事で、俺ぁリアン様からお許しと祝福を頂い…………リュリュ?」

 事のあらましをローゼルに話して聞かせたビスカスは、自分の胸に顔を伏せているローゼルの肩が、細かく震えているのに気が付きました。

「どしたんですか?!泣いてんですふぁっ!?」

 ローゼルは目に涙を溜めながらも、顔を上げるや否や無言無表情でビスカスの頬っぺたをむにっと掴んで引っ張りました。

「ひょ、ふぁひふふ!?」
「痛くって?ビスカス」
「いれーれふ!ひゃめれくらひぇー!」
「痛いって事は……本当……」
「ふぉんほれ、す!」

 引っ張られすぎて涎が出そうになりながら請け合うと、ローゼルはやっと手を離してくれました。

「ビスカス……」
「へー?」

 今のは久々に良い仕置きだったと、ビスカスが脳内ローゼル暴虐コレクションに新たなページを加えていると。

「……嬉しいっ……!」
「っぷ!!」

 ローゼルが頭突きをかます勢いで、ビスカスの首っ玉に抱き付いて来ました。

「ありがとう、ビスカス……!」
「……や、俺ぁ、何も……全部、兄さんやマリア様に助けて頂いた結果なんで」
「ううん……助けて貰えるのは、助けたいって思えるような人だからでしょう?」

 ローゼルは、先程自分が痛い目に遭わせたビスカスの右頬に口づけました。

「ビスカスが何もしなかったら、許してもらえるのは、まだまだずっと先だったと思うわ……」

 そう言うとローゼルは微笑んで、左の頬に口づけました。

「……ありがとう、ビスカス……」

 ふわふわと幸福そうに呟く妻の唇に、ビスカスはちゅっと口づけました。

「夢じゃねーですよ?俺達ゃ、これで正式に結婚出来るんです」
「うん……」
「リュリュに、一番に伝えたかったんですが……お許し頂いた事だきゃあ、領主様とタンム様に昨日館でお伝えしやした。不在の理由を聞かれたってのも有りやすけど、その方が手配やなんかを少しでも早く進めて頂けんじゃねーかな、って」
「ええ……」
「……泣かねーで下せぇよ、リュリュ……」
「だって……嬉しくて……夢みたい…」

 二人とも拭える様な物を一切身に付けていなかったので、ビスカスは敷布の端を無理矢理引っ張り出して、ローゼルの涙を押さえました。
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