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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
*
「お、見えた。目的地は、あそこだ」
ビスカスと兄弟子、弟弟子の三人は、依頼を果たして山道を歩いておりました。
雪が少ないとはいえ、油断の出来ない北の冬の山間の道です。兄弟子が指差した、切り立った崖沿いの道を進んだ先の方が少し開けて、人家が有るのが見えました。
「……凄い所に住んでますね……」
「そうだな。こんな場所でも夏は結構来訪者が居るが、この季節に訪れる者は少ない。だから逆に、手土産が効く」
「なーるほどー、手土産ね……ん?手土産?」
「依頼主様に、手土産ですか?」
初めてこの地を踏んだ二人は、同時に疑問を口にしました。
「いいや。依頼主に見せる前に、本物かどうか確かめたいと思ってな。見せたら偽物だったってんじゃあ、無駄足だ」
「じゃあ……あそこは、何なんですかい?」
ビスカスの質問に、兄弟子はにっと笑いました。
「あそこは、石屋だよ。」
*
「うわ、すげっ……」
どうぞ、と招き入れられた店内で、ビスカスは顎が外れそうになっておりました。
石屋は、石屋と言うだけあって、ありとあらゆる石が置いてありました。
店内に大きな石の塊が有り、何だろうと思ったビスカスは、ぐるっと周りを回ってみました。
するとそれは、内側の空洞に紫水晶がびっしりと生えている石を、半分に割った物だったのです。
「こんな洞窟に入ったら、寿命が延びそうですね……」
「いやいやいや!寿命が延びる前に、石が刺さんだろ!なんでこいつら全部こんなに尖ってんだ?!武器か、これ?!」
ビスカスと弟弟子がやいやい騒ぎながら店内を見学している間、兄弟子は店主と話をしている様でした。二人は、旧知の仲の様です。
「お前ら、何か壊したりするなよー」
「へーい」
粗方店内を眺めた二人は、返事をすると兄弟子と店主の居る方に近付きました。
そこでは、ちょうど話が一段落した所でした。
「……では、拝見致しましょうか」
「ああ、頼む」
兄弟子は、懐から慎重に依頼の品を収めた箱を取り出して、光沢のある柔らかそうな布包みを開けました。
「あ」
包みの中から、現れたのは。
一滴の大きく透明な雫の中に咲いている、百合の花でした。